本 「共喰い」田中慎弥:性暴力と女性側からの多層的な視点 第146回芥川賞受賞された、田中慎弥さんの小説「共喰い」の感想と考察を記載。交際中の幼なじみ・千種に対しはずみで暴力を振るってしまった遠馬は、自分にも父親と“同じ血”が流れていることを自覚させられる。川辺の田舎町を舞台に起こる、逃げ場のない血と性の問題を描いた作品。 2024.04.09 2024.07.02 本本・考察
本 【推し、燃ゆ】宇佐見りん:なぜ最後、綿棒のケースを床にぶちまけたのか? 芥川賞を受賞し、本屋大賞にもノミネートされた、宇佐見りんさんの小説「推し、燃ゆ」の感想と考察を記載。推しがファンを殴打したという行動は、あかりに勇気を与え、自分も今のうまくいかない人生をぶち破ろうと試みるのだが、結局は、片付けるのが安牌な綿棒を一瞬のうちに選んでしまう。 2024.04.07 2024.07.02 本本・考察
本 【道化師の蝶】円城塔:着想はどこから来てどこに行くのか? 本作では、蝶と蝶を捕まえるための虫取り網が登場する。蝶は着想(アイデア)の比喩であり、虫取り網はアイデアを捕まえる行為を指している。網は文字であり、着想を捕まえるということは、言語化するということでもある。本作では、言語化を着想の対極と位置付けているように思われる。 2024.04.13 2024.07.02 本本・考察
本 【破局】遠野 遥:感情を自己防衛的に規範でコーティングするゾンビ化した人間 何か辛いことや悲しいことがあったとしても、社会規範という基準ですぐにコーティングして、何も解決していないのに、あたかも解決したかのように処理して次に進んでいくゾンビ思考である。自分の感情が見つめるのが怖いのかもしれない。 2024.04.14 2024.07.02 本本・考察
本 【テクノ・リバタリアン】橘玲:世界を変える唯一の思想。3つの政治思想と功利主義 リベラリズムとコミュニタリアリズムは、自由そのものを否定しているのではなく、自由だけではダメで、若干の修正(平等や伝統も大事)を加えているのであり、その点で、リベラリズムも小ミュニタリアリズムもリバタリアニズムを否定するのは困難と説いている。 2024.04.25 2024.07.02 本本・考察
本 【スクラップ・アンド・ビルド】羽田圭介:要介護三を五にする過剰な足し算の介護とは!? 第153回芥川賞受賞された、羽田圭介さんの小説「スクラップ・アンド・ビルド」の感想を記載。体が不自由で、毎日のように「早う死にたい」と尊厳死願望を募らせる祖父に対して、孫の健斗は「過剰な足し算の介護」に積極的に取り組むことになる。 2024.04.30 2024.07.02 本本・考察
本 【地球星人】村田沙耶香:この世は人間を作る工場。働く道具と生殖器 ここでいう普通とは、「働いて生産性を高めること、子孫繁栄のために子供を産むこと」の2つにより焦点を当てているように思う。両親の影響は大きく、子供への期待や両親が思う当たり前の価値観の刷り込みを、村田さんは子供ながらに認識していて、それに対する自分の違和感を小説に投影しているのだろう。 2024.05.03 2024.07.02 本本・考察
本 【コンビニ人間】村田沙耶香:五感と無機質な表現が面白い 最初の一文が「コンビニエンスストアは、音で満ちている。」と聴覚から始まっているが、本作品を通じて、コンビニの無機質さと、聴覚をはじめとした五感の表現が多用されており、読んでいてコンビニがワクワクする場所だと想起させてくれる感じがした。 2024.05.01 2024.07.02 本本・考察
本 【三体】黒暗森林と文化大革命のアナロジー:猜疑連鎖とデタント 「黒暗森林」の中で描かれる猜疑連鎖は、文化大革命時の中国社会に見られた猜疑心と不信感の連鎖のアナロジーである。このアナロジーは、信頼の欠如と不信の連鎖がどれほど破壊的であるかを強調している。最終的には羅輯が自分の計画を盾に、三体人と交渉することで、第二部終了時はデタント(緊張緩和)の様相を呈して終わる 2024.05.20 2024.07.02 本本・考察
本 【発生生物学】なぜ遺伝子リレーだけで空間的配置を規定しなかったのか? 細胞が持つ設計図(=ゲノム配列)は同じなのに、実際に作られる人間の体は同じではない。現在の生命体は、タンパク質の濃度勾配、遺伝子リレー、形態形成運動という3つの異なる仕組みを組み合わせることで、複雑な体の構造と機能を効果的に形成していると考えられる。 2024.05.27 2024.07.02 本本・考察