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【督促OL修行日記】榎本まみ:人間がつい無意識で動かされてしまう感情は「恐怖心」「義務感」「罪悪感」の3つ

この記事は約8分で読めます。

はじめに

督促という、クレジットの入金をしない人に対して催促する仕事(借金取り立て)をされている方の、ストレスフルな仕事の対処法が書かれた本。

入金要請の電話をかけると、お客様から罵声の嵐…。日本一ストレスフルな職場・督促コールセンターに配属された著者は、入社半年後には体重が10キロも減ってしまう。しかしある時、一念発起!気弱なOLがトホホな毎日を送りながらも、独自に編み出したノウハウで、年間2000億円の債権を回収するまでの実録。

人間の感情の動きの本質的な部分・債権回収にまつわる面白エピソード・交渉術ノウハウなど、なるほどと感じる部分が多い内容だった。

よくある成功者のノウハウだけを自慢的に紹介している感じでなく、試行錯誤したストーリーもある点が良かった。物語としても読みやすく面白かった。

以下まとめ

コールセンターの意外な?事実

1時間60本ノック

・新人は1時間に60本の電話ノルマ。まずは量が大事。1日平均500本

・世の中にあるありとあらゆる「後払い」には、必ずその後ろに督促をしている人がいる

目に見えないが、重要。システムを成り立たせるためには背後で人的な作業が必ずあるという

21時からは手紙タイム

いくら電話をかけても電話に出ない、つながらない客に対して督促状を送る。長期にわたって入金しない客には、わざわざ手書きで送ることも(機械的な文字より人情味が出るかららしい)。

家族出てしまう問題

クレジット契約を結ぶ際に「家族に内緒」「配偶者に内緒」項目があり、これにチェックした客の場合は、家族や配偶者に会社名や契約内容を知られてはいけない。

なので、契約者の奥様が電話に出ても身分をあかせずに、「〇〇(契約者)とはどういう関係なのよ!?」と不倫相手と勘ぐられて修羅場化することもあるそう。結果、婚約破棄に至り、契約者から損害賠償の電話クレームが来た例も。

こんな副次的な揉め事あるのかとビックリ。こっちの方が大変そう

人に知られたくないものは回収率いい事実

美容整形や包茎手術など、人に知られたくないものは

「X月X日、XXクリニックでご利用された、包茎手術の医療費がまだ支払われていないですけど。。。」

と伝えたりすると、すぐに支払ってくれるそう。回収率100%の奇跡の債権?

ちなみに、こういった手術専門で立て替えと回収やってる会社もあるらしい。確かに、ビジネスとしてみれば、回収率が高いところにのみ特化した方が、オペレーターも楽だしいいよなぁ。難しい普通の回収も誰かがやらなくてはいけないけど。

支払い強要禁止問題

「必ず入金してください」「絶対支払いしてください」といった支払いを強要する言葉は現在使えないとのこと。過去に行き過ぎた督促が原因で規制入ったらしい

→知らなかった。今でも強要する言葉をむしろ使いまくっているかと思ってた。これは、督促する方としては使える交渉カードが激減して大変そう。。。。

交渉ノウハウ

人間がつい無意識で動かされてしまう感情は「恐怖心」「義務感」「罪悪感」の3つ。

この3つの感情を絶妙な加減で刺激する必要あり

罪悪感戦法

約束事(入金日と入金金額)は相手に言わせる。約束を破られた(入金しなかった)直後に電話するとさらに効果的

義務感戦法

・「お客様が使ったものなので、お支払いを頂かないと困ります」という正攻法戦法

→ただし、「そんなことは分かってるんだよ!」と反発される可能性大きいので効果は限定的。

確かに、これは医療現場でもよく見る光景。正論ベースのコミュニケーションは限界がある。

恐怖心戦法

・昔は、よく使われていたが、今は法律が変わり、客に強くいうと逆に罰せられてしまうのであまり使えない

→「長期に延滞するとカードが使えなくなります。お客様はまだお若いんですから、この先お金が借りられなくなりますよ〜」という将来必要な時にお金が借りられなくなるという恐怖を刺激する方法くらいしか使えない。

保険は逆アプローチで不安を煽っている。将来必要な時のためにお金を貯めておきましょう!と

疑問投げかけファースト戦法

人間の脳は疑問を投げかけられると、無意識にその回答を考え始める性質を利用

「お金を返してください」→「お客様、いつでしたらご入金いただくことが可能でしょうか?」

「いつ返せるかわからないなぁ」→「それでは、いくらでしたらお支払いいただけますか?」期日がダメなら金額を聞く。質問を変えることで、相手との雰囲気を悪くすることなく入金催促可能

先にごめんなさい戦法

「お仕事中申し訳ございません。申し上げにくいのですが、ご入金の確認が取れていません」

人間先に謝られてしまうと、その上さらに怒りにくい。

→催促される事態に陥ったのは客側に原因があるので、催促する側が謝るなんておかしな事態になってるなと思ったが。大変です

怒鳴られたら足つねる戦法

怒鳴りつけるようなクレーム電話を受けた直後に、フリーズしまうと、そのあとの主導権を全て相手に握られてしまう。

怒鳴られた瞬間に、思いっきり足の小指をもう片方の足で踏んづけて下半身を刺激することで、怒鳴られたショックによる金縛りが解けて、客に反撃することができるとのこと

確かに、条件反射的にすぐに出来る対策が必要。具体的で面白かった

付箋作戦

目に見えるところに、「こう言われたらこう返す」と想定した付箋をいくつか用意。

→怒鳴られた時に、固まってとっさにいうべき言葉が出ない時、逆ギレしてケンカ腰になりそうな時は、付箋を見て、付箋の呪文を読むことだけに集中する。

客との交渉の中で、一番短く、一番わかりやすい言葉を抽出して付箋を作るとなお良い。1顧客との交渉の効率をなるべくあげて、数をこなすことが必要。

お客様トレード戦法

自分のアプローチスタイルでは難しい客は、他のオペレーターにお願いする。

「このお客様も〇〇君向きだから、あげるよ」

「このお客様にちょっと強く言い過ぎちゃった。フォローしておいてくれる?」

などのやりとりがオペレーター間でやりとりされることもあるとのこと。

もちろん、回収を他のオペレーターにお願いすれば、回収をした他のオペレーターの成績になるが、苦手なタイプの客に割く時間を減らせるし、お互い得意なタイプの客をトレードすれば2人で回収成績を伸ばせる

→コールセンターって個人プレーだと思っていたけど、チームプレーなんだな。みんな得意不得意あるもんな

ツンデレ・クロージング戦法

催促電話の途中では理詰めで淡々と話しながら、交渉の終盤には、甘い声と口調に変えて「色々厳しいことを申し上げましたが、くれぐれもご無理はしないでくださいね。お客様のお身体が一番大事なんですから….では、ご入金お待ちしております」

とデレでクロージングする。

謝罪金額置き換え作戦

コールセンターは感情労働。自分の感情を抑制することでお金を得る労働形態

50万借金している客に怒鳴られて、謝らなければならない(コールセンターの人は怒鳴られてもそれが理不尽な要求であっても、謝らなければならないらしい)時は、「この1謝りが50万!」と金額に換算。

悪口コレクション作戦

客から怒鳴られることをゲーム化しようという作戦。

1回怒鳴られるごとに1ポイントとしてカウントし棒グラフ化

怒鳴られた悪口・人格を否定する言葉をノートに書いていき、コレクション化する戦法。ポイントがある程度溜まったら自分にご褒美

→客に怒鳴られることが待ち遠しくなったらしいw。あと1回で10ポイントなのに、昨日も今日も全然怒鳴られなかったなあと。これはすごい。ゲーミフィケーション効果

ゆっくり=自信法則

自信がありそうに聞こえるためには、とにかく、ゆっくりしゃべること。それのみ。

人間、怒る時は自然に早口になるので、逆にオペレーターがゆっくりした口調で話すことで、穏やかな雰囲気で交渉できるとのこと

ひたすらお詫びの罠

単純に「申し訳ございません!」だけを連呼していると「お前、謝ればいいと思ってるんだろ!」と客を逆撫でしてしまう問題。確かにこれはある!

→「客が起こっている内容を具体的に前に添える+謝罪」にすることで共感性を示すとよい。

「謝罪2:お礼1」戦法

同じく謝罪関連で。申し訳ございませんが3回続くと、くどくなり、逆に相手を逆撫でする

「ご迷惑をおかけします。でもちゃんと電話に出ていただいてありがたいです!」など、謝罪2に対してお礼を1かませることが重要。

なるほど。割合まで明記してあるのはさすが。経験がものを言うやつ。

延滞タイプにより声を変える戦法

遅れが発生してまだ日が浅い「初期延滞」の客には、ものすごく高い声で、口調も砕けて

「お支払い日のお知らせでご連絡しましたぁ〜」

と催促し、長期延滞の客の場合は、完全に落ち着いた低めのトーンで

「お支払い日のお知らせで、ご連絡させていただきました」

と催促。初期延滞はうっかり入金忘れの方も多いので、気を悪くさせない軽い調子でお願いした方が、入金お願いにしたがってもらいやすい。一方長期延滞の客は支払いが遅れている自覚ありの客なので、軽い調子で電話したら舐められるとのこと

→声だけが客との接点ゆえ、声の使い分けも重要なんだな。ここまでくるとプロ。

色々面白エピソード

代金の代わりに物を送ってくる客

段ボールに詰められた野菜とともに「お金がなくお支払いできないので、代金の代わりにうちで取れた野菜をお送りさせていただきます」

→もちろん送り返すみたいです。ただ、送り返す際に元払いなので、負担でしかないとw

箇条書きでまとめてたが、経験をもとにした具体的なノウハウが紹介されていて、面白かった。催促だけではなく、日常的なコミュニケーションでも使えそう。

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