巷で、特に仕事をしていると会話に出てくる「あの人は地頭がいいよね」「学歴は高いけど地頭が、、、」。
地頭に関して、一度調べたことがあったので、ここにまとめておく。
いくつかの記事を読んで、なるほどと感じた地頭の定義をまずは列挙していく。
巷では、地頭はIQと同一視されやすい。
様々な地頭の定義:記事からピックアップ
その場の限られた情報のみで考えを深める力
まずは、「具体と抽象」という本で有名な細谷さんの対談記事より。全6回だけど、全部の回の記事が面白かった。
地頭力とは、「その場の限られた情報のみで考えを深める力」と定義している。一を聞いて十を知るという感じか。そして、さらに、地頭力を下記の6要素に分解している
6つの要素のうち、知的好奇心、論理思考力、直観力が土台で、その上に仮説思考力、フレームワーク思考力、抽象化思考力という3つの思考力が載っているような状態
とのこと。
- 仮設思考力:結論から考える力
- フレームワーク思考力:全体から考える力
- 抽象化思考力:文字通り具体事象をグルーピングして抽象的にまとめて考えられる力
ロジカルシンキングだけでも、直感だけでも、物事の本質を捉えるという観点において不足していて、両者を組み合わせて本質を捉えられるのが地頭が良いということらしい。
そして、その土台には知的好奇心がないとダメとのこと。
面白かったのは、地頭力は先天的なものではなく、自問自答する習慣をつければ、後天的に鍛えられるものと定義しているところ。
現状把握力・論理的思考力・表現力・発想力
下記記事では、地頭を4タイプに分類していて、「発想力」が最も難しいとしている
個人的に面白いと感じたのは、「表現力」という項目をスキルとして抜き出して、論理的思考力より希少性を高く位置付けているところ。
発想力の源となるのは、異質性のある知識の蓄積なので、同質性の興味ある分野のみの情報収集にとどまることなく、教養を高めたり分野を問わず乱読するなどして、知識を蓄積することが重要とのこと。
地頭は立方体の体積:抽象具体×発想の幅広さ×思考体力
竹本さんは地頭を「課題を解決するためのベースとなる力」と定義し、下記の3軸で構成される立方体の体積としている。
- 具体と抽象を行き来する力(上下):考えの高さや深さ
- 発想の幅広さ(左右)
- 考え抜く力(奥行き):思考体力
個人的には、思考体力に関して言及している点が面白いと感じた
具体と抽象の行き来、幅広い発想が得意な人は、要領がよいと評価され、早い段階である程度まで昇進します。ですが、考え抜く習慣がないと、伸び悩むケースもあります。そういった要領のよさでたどり着けるところにある壁をさらに突き抜けられる人というのは、思考体力があり、我慢して考え続けられる力を持っています。
これはその通りだと思う。要領の良い人は、80点、中の上までは行けるんだけど、そこからさらに上のトップ層に食い込むとなれば、要領だけでは限界がある。思考体力が必要になってくる。でも、思考体力って頭すり減るのでとても大変だと思う。
抽象と具体の往復運動
先ほどの立方体の概念の1つとして出てきていた抽象と具体の往復に関しては、「ストーリーとしての競争戦略」の著書でも有名な楠木さんも下記のように言及している
地頭がいい=「具体と抽象の往復を、振れ幅を大きく、頻繁に行える」
先ほどの往復運動に、速度を加えている点が面白い。
https://dhbr.diamond.jp/articles/-/1420
答えを出さずに複数の選択肢を抱えておける能力
こちらは、地頭というよりは「頭の良さ」というもう少し広義で、和田秀樹さんと中野信子さんが対談された「頭の良さとは何か」の本に記載されていた内容。
私は、人間が持っている〝最後の砦〟といえるものは、「答えを出さずに複数の選択肢を抱えておける能力」だと思っているんです。
(中略)
「これは白でも黒でもなくって、グレーかな・・・」というように、グラデーションの中であそびを持たせて保っておける能力。それには「ワーキングメモリー」も使いますし、頭脳に相当余裕がないとできません。ある人が、普通の人ではちょっと思い付かない発想ができるというのは、思いもよらない組み合わせが作れるということです。それが実現できるとしたら、それはワーキングメモリーの容量が大きいからです。
「頭のよさとは何か」中野 信子、和田 秀樹
一つの事象に対して、多面的なモノの見方ができないと、すぐ白黒つけて二元論的に判断しがちだが(その方が本人はクリアカットに分かって幸せかもしれない)、物事を深く理解するほど、二元論で片付けられることはなく、ほとんど全ての事象はグレーであることに気づいてくる。
逆に言えば、グレーであることに気づけたということは、その時点で1つの事象に対して、いろんな側面から見ることができていること。先ほどの思考体力にもつながってくるが、その状態を保持しておくのは大変である。
様々な定義を読んで思ったこと
どの記事の地頭の定義も面白かった。
最後の中野さんと和田さんの対談の本以外は、ピックアップした記事の順番に、地頭を構成する要素が絞られていっているのも面白い。
最初にピックアップした記事では、地頭は6要素からなると記載しているのに対して、最後の楠木さんの記事では抽象と具体の往復の1要素のみに限定している。個人的には、後者が、地頭力の定義として一番しっくりきている。
とはいえ、何もインプットがないところからはアウトプットは生まれないので、特定の領域だけではなく様々な領域に好奇心を持ってインプット量をまずは増やすことが重要、というのは認識した。月並みだけど。まさに、Steve Jobsが行っていたConnecting the dots。
量質転化させてブレークスルーは突然に
なんか、ChatGPTのブレークスルーみたいだが。
とはいえ、無鉄砲に量をこなすのみではなく、ある程度の量をこなしたら、振り返って対象をグルーピングしたり、抽象化できるならしたり(質転化した後ならこれが無意識でできるようになってくる)というフィードバックも意識しながら繰り返して、できるだけ早く量質転化させできると良さそう。
かつ、その量に関しても、最初は対象を絞って始めて、慣れてきたら対象を広げて行った方が良さそう。おそらく、そうしないと、ドットとドットが離れすぎて、ネットワークを構築するのに時間がかかりそう。
ディープラーニングの局所最適解と過学習問題に似てる気もする。学習率が大きすぎると発散してしまって、大局最適解には辿り着けないが、とはいえ、学習率が小さいと局所最適解に収束してしまい、対局最適解に辿り着けない。
なので、同じ分野の知識をある程度集中して掘り下げて、その分野の知識のネットワークを構築しつつも(学習率小)、たまには全然自分の関係ない分野の体験や情報も取り入れつつ(学習率大)みたいな。
ただ、話がズレるが、最近ハマった、ユングのタイプ論やMBTIで行くと、こうした様々なインプットを関連づけて捉えることが得意なタイプ(NT型)もいれば、そうではない性格タイプもあるとのことで、結構生得的な部分もあるのかなと思ったり。
関連して、元ドリームインキュベーター社長の山川さんの著書「瞬考」の概念もこれに近い。楠木さんの「ストーリーとしての競争戦略」と1位2位を争うくらい良かったので、興味ある人はぜひ。
『会社四季報』を 10 年分丸暗記したことで(凄すぎて言葉も出ないが)、たくさんの事象や事例をパターン化して頭に格納することができ、瞬時に仮説が湧きやすくなったという著者の実体験が書かれている。
興味ある分野に限らず、全業種のIRを読んだところもポイントなのだろう。
コメント
ここでいう、具体と抽象とは、どのようなことを指すのでしょうか?
理論と現実
と捉えればいいんでしょうか?
大雑把な一般論と具体的なケース
と捉えればいいんでしょうか?
コメントありがとうございます!
後者に近いと思います。
下記記事に記載されている例は
・ニコニコ動画の抽象:意図的に答えを収束させないエンジンを作成し、wikipediaと差別化し独自性を打ち出す
・ニコニコ動画の具体:コメント表示件数をどうするか?(過去のコメントをずっと用事していると意見が収束する)
https://dhbr.diamond.jp/articles/-/1420?page=2
という感じですね。会社で複数の人が関わるサービスを経営している場合は、みんな同じ方向を向くという点でのビジョンが必要で抽象的なものになる傾向が強そうですね。