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【メルプ⑬】東京都医師会で、メルプはLINEベースなので非推奨と名指しされた過去

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この連載記事では、当時ビジネスを全く知らなかった私(かず)が、初めて医療業界のSaaS「メルプWEB問診」を立ち上げて、約3年後に約200医療機関にサービスを導入した0→1終了のタイミングで2020年に株式会社JMDCに売却するまでの話です。当時、何を考えていたのか、失敗したこと、うまくいったことを振り返っていきます。圧倒的にリアルで生々しい、メルプのリアルを一緒に見ていきましょう。

以前こちらの記事で、メルプは開発当初、LINEベースの予約・問診サービスとして開発したことを書きました。

東京都医師会でメルプをプレゼンする機会

サービスのリリースを Facebook なので告知した際に、学生の頃よりお世話になっている東京都医師会の理事の先生より「今度東京都医師会のイベントで開業医の先生方が100人近く集まるので、そこでブース出展してサービスの宣伝もしたらどう?」 という、ありがたいご提案をいただきました。

 私は、「こんなに良い機会はないだろう」と思い、早速下記のような両面1チラシを作って100部ほど印刷して、意気揚々と当日展示会場に向かいました。確か、2017年4月くらいだったと思います。

私達の他にも、医療関係者間コミュニケーションアプリ「Join」など2,3社がブース展示をしていました。

当日は、13時くらいからイベントが始まり、診療報酬改定を中心に2,3時間くらい話が続いていたのですが、最後の方に司会の方から「本日ブース展示をしている企業が数社ありますので、それぞれ1分ほどサービスのご紹介をお願いします」と話題を振られました。

私は、「LINEのチャットボット機能をベースとした医療機関の予約・問診・アンケートサービス「メルプ」を提供しております株式会社flixyの吉永と申します。少しでもご興味を持たれた方はまずはお話だけでもお気軽にご連絡ください。」というようなことを言いました。

ふぅ、今日はこの一言を言うために来たようなものだけど、無事終わってよかったぁ。とホッとしたのも束の間、全企業のプレゼンが終わった直後、医師会の方より

「みなさん、サービスのご紹介ありがとうございました。東京都医師会では不特定多数のSNSプラットフォームを医療機関で利用することは非推奨としています。メルプさんは、LINEベースのサービスということですので、その点ご留意ください。例えば、ソフトバンクが提供しているヘルスケア専用SNS「メディカルケアステーション」など、医療従事者のみのクローズドに提供しているサービスをご利用することを推奨しています。」

と、参加者の開業医全員に話されたのを聞いて、

「えーーーーーー!!なにこれ!オワタ」


と頭が真っ白になりました。完全にプレゼンしてディスブランディングになってるじゃん。これからどうするよと。

頷いている医師の方もちらほらいるし、終わったな。

まさかこのような結果になるとは思ってもいませんでした。

ちょうどタイミングも悪く、芸能人のプライベート情報がLINEから流出してニュースで話題になっていたこともあり、「LINEはセキュリティ的に危なそう。」という意識がなんとなく広がっていたのもマイナスでした。

ディスブランディングに半年近く悩まされることに

そもそも、当時のサービスはPMFを達成していなかったので、それが原因で売れなかったのですが、ここにきてLINEベースというのも根本的に見直さないといけないという、新しい課題が降ってきました。

「LINEのメルプ=セキュリティ的に危なそう」

というディスブランディングなイメージをどう払拭すれば良いか。

あとは、実際に現場の開業医にプレゼンしていて

  • LINEはプライベートのSNSで使うもので、公的なサービスで使うイメージが沸かない
  • サーバーが国内ではなく韓国にあるので(こちらに関してはLINEは現在データを国内に移転中)セキュリティ的に危なそう。
LINEのデータ移転に関するご説明|LINEヤフー株式会社

というフィードバックもいただいていました。

とはいえ、LINEのチャットボットベースでサービスを結構作り込んでしまったしなぁ。LINEベースを辞めるとなると、また0から開発し直さないといけないなぁ

という悩みもありました。しかし、このままではダメと思い、LINEベースの予約・問診・アンケートサービスから予約とアンケートを切り離し、問診のみに特化して、かつ、サービス名も「メルプ」ではなく「メルプWEB問診」と、あえてWEB問診という言葉をつけることで、「メルプはLINEベースではなくWEBベースの問診サービスです」ということを伝えるようにしました。

サービスの開発回収自体は3ヶ月くらいで終わり、新生メルプとして「メルプはWEBベースになりました」と打ち出したのですが、すでに一部イメージとして定着していた「LINEのメルプ」を払拭するのにはもう3ヶ月くらいかかりました。まだメルプがそこまで売れていない段階だったので、このくらいの期間で済んだとは思いますが、ディスブランディングの払拭には時間がかかる、というとても良い勉強になりました。

あとは、メルプはオンラインでネット完結で導入できるサービスとして全国に売り出したのですが、東京都医師会のイベントに来ていた開業医はおそらく都内の方が中心で、地方までディスブランディングは浸透していなかったというのも大きいと思います。

過去投稿見たら、『医療機関向けに問診に特化したサービスをリリースしました(今回はLINEは関係ないです)』と投稿していて、但し書きしていますね苦笑。必死感が伺えます。

吉永 和貴
医療機関向けに問診に特化したサービスをリリースしました(今回はLINEは関係ないです)

よかった点

とはいえ、悪かったことばかりではなくて、よかったこともありました。 一番良かった点は、 LINE 風のチャット ベースの問診の UI をそのまま踏襲したことです。

これは医師の好みによって別れるところはありますが、 いわゆるフォーム形式の堅い感じの入力とは異なり、クリニックの医師(のアイコン)と対話をしながら 一問一答形式で患者さんは問診に回答するので、親しみやすさが生まれて良いというメリットがあります。

実際に、この UI の点を評価して、メルプを採用してくださる 医療機関 さんも多いので振り返ってみて悪いことばかりではなかったな と思っています。

タイミングも重要

さて、 医療機関とLINE の関係に関してですが、 コロナ 禍以降では医療機関の LINE の受け入れもずいぶん進み、今では保険医療機関のクリニックでも自前のLINE公式式アカウントを使って集客したり、 LINEベースの予約システムをどんどん採用したりして、 医療機関でも LINE を使うケースが増えてきています。むしろGMOグループが提供しているLINEベースの医療機関予約サービスは急成長しています。

実際に開業医の先生方に話を聞くと「やっぱり LINE は便利だから導入した」という言葉をいただくことも多く、2017年当時の開業医の先生方の反応を目の当たりにした身からすると、5,6年でこんなに変わるのかと驚きの方が強く、隔世の感というか、世の中に絶対というものはないなぁとしみじみと思わされます。

 東京都医師会の方も体調が変わり、方針も変わったみたいでして、前ほど厳格にダメとはなっていないという話も聞いたり聞かなかったり。。。

 まあ、 世の中に絶対というものはなくタイミングも重要 ということですね。

メルプのリアル:全話一覧はこちらから

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