【国際競争力】日本の研究は、もはや世界トップクラスではない?Natureが2023年10月25日に掲載

japanese-research-ranking
この記事は約6分で読めます。

日本の研究は、もはや世界トップクラスではない?

2023年10月25日に英Natureが「日本の研究は、もはや世界トップクラスではない」というタイトルの記事を掲載。

(日本には)世界最大級の研究コミュニティがあるにもかかわらず、世界レベルの研究への貢献は減少し続けていると述べている。

Japanese research is no longer world class — here’s why
Despite a strong workforce, Japan’s research continues to slide down the indicators of quality.

記事のソースは、日本の文科省の報告を下にしている。

科学技術指標2023・html版 | 科学技術・学術政策研究所 (NISTEP)
科学技術・学術政策研究所は、国の科学技術や学術振興に関する政策立案プロセスの一翼を担うために設置された文部科学省直轄の国立試験研究機関です。

かなり前から定期的に話題になっているが、日本の科学技術力の低下に関して、調べてみる。

研究がトップクラスではないとは何を指しているのか?

論文の質(引用数トップの論文の割合)の低下

日本の研究者数の合計は中国、アメリカに次いで世界第3位のままだが、論文の質(ここでは最も多く引用された論文の数のことを指す)が低下しているとのこと。

具体的には、2019-2021の3年間でpublishされた論文数は世界5位だが、上位10%に占める論文数は13位と低下しており、シェアも6%から2%にまで低下した。

元の文科省のデータを見ると、日本の順位が徐々に下がっているのは記事の指摘の通りだが、それよりも米国と中国の線対称な感じすごい。

文部科学省の研究機関のひとつである科学技術予測・政策基盤調査研究センター長の伊神氏は、「日本の研究者の生産性が低下したわけではなく、他の国の研究環境が過去数十年で大幅に改善され、研究環境の面で日本が追いついていないことが原因」と述べている。

研究の質の低下の3つの主な要因:日本の研究者の生産性が低下したわけではなく研究環境の問題

日本の研究の質の低下の主な要因として、「研究費が少ない・研究に費やす時間が少ない・研究者を志向する若手の減少」という「3少ない」を挙げている。

研究費が少ない

過去20年間で大学部門の研究支出がアメリカとドイツで約80%、フランスで40%、韓国で300%、中国で900%以上増加しているのに対して、日本の支出は10%しか増加していない。

対GDP比率だと、日本も諸外国と比較してbehindというわけではないように見える。 むしろ、韓国の力の入れようがすごい。中国もそうだが。中国はGDP総額も研究開発のGDPに占める割合も両方とも伸ばしている

人口100万人あたりのPh.D.取得者数に関しても、韓国は米国と並んで右肩上がりに急成長している。

大学の研究者が研究に充てられる時間が減った

2002から2018年にかけて、日本の研究者が研究に割けられる時間の割合は47%から33%に減ったとのこと。

その原因として

  • 教育、業界とのコラボレーション、コミュニティとの関わりにおいて多様な役割を担うことがますます期待されている→研究に使える時間が限られる
  • 中間管理職的な業務(雑務):外国人の研究室メンバーのためのビザの書類作成から、学生が期限までに家賃を支払っていないという家主からの電話対応に至るまで、あらゆることはすべて、主任研究者の責任

→日本のジョブ型ではなく、メンバーシップ型雇用の悪い側面が出ている

  • 日本はラボのテクニシャンが、20人の研究者に対して1人の割合→諸外国と比較して著しく低い

→確かに、これも前から言われていたこと。

博士課程の学生数が減少:優秀な若手が研究者を目指さない

博士課程の学生の数は過去 20 年間で 21% 減少

この理由としては

  • 大学が研究者に臨時の職を提供することが増えているため、学術界でのキャリアの見通しは悪化するばかり+メンバーの年功序列の増加に苦労している→若手が研究分野でキャリアを積むのを遠ざけてしまう
  • 常勤の研究ポストの少なさ
  • 海外で活躍する研究者の減少

日本の研究者の海外離れに関しては、下記記事に詳しく書かれている。

日本の研究者の海外離れ|黒坂宗久(黒坂図書館 館長)
いつものように、まずは冒頭部分の引用から。 日本の若手研究者らの「海外離れ」が深刻だ。中長期にわたり海外に渡航する研究者数は過去20年ほどで4割減った。グローバルに活躍する研究者の減少は、深刻化する日本の科学技術力低下の大きな要因になってい...

また、「【国際競争力】イノベーションはなぜ途絶えたか 科学立国日本の危機 by 山口栄一」で紹介させていただいた本では、日米のSBIRプログラムの違いという観点から、日本のイノベーションの凋落を記載している。

その他

新分野への挑戦が日本は少ない

ちなみに、研究費に関しては、絶対額もそうだが、割り当て方にも課題があるみたい。

生命科学・医学分野に配分された18万件以上の科研費と研究成果の関係を分析した結果、「選択と集中」より「広く薄く」配分したほうが画期的な成果を効率良く生み出せるとのこと。

研究費の「選択と集中」はやっぱり間違いだった|コラム:現場的にどうでしょう | AnswersNews
\コラム:現場的にどうでしょう/ 「研究費の『選択と集中』はやっぱり間違いだった」 執筆は黒坂宗久さん(@munehisa_k)です。

比較すると、日本は、諸外国と比べて、同じような研究分野に人が集まっている。

研究の多様性が低下している理由として、以下3点がハイライトされている。

・一時的な流行を追った研究の増加
・新しい研究領域を生み出すような挑戦的な研究の減少
・新たな研究テーマを見出すための探索的な研究の減少

論文数の割合でいくと、日本は臨床医学で増加傾向だが、化学・物理学・基礎生命科学では減少傾向

韓国の科学技術動向:なぜこんなに躍進してるのか?

内閣府のホームページにて、韓国の科学技術動向についてリサーチした記事が掲載されていた。

https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20221117/siryo2-2.pdf

韓国では研究開発費、研究者数、論文数ともにここ20年以上コンスタントに右肩上がり

読んだ中で、個人的に興味深かったものをピックアップ

  • 韓国では大学の研究力強化「BRAIN KOREA」事業があり、1999年開始して7年事業。延長を繰り返し、現在4クール目。政権交代とは関係なく継続されている大型R&D事業で、SCI論文数を大学の研究力評価の主要指標としている。
  • 科学技術に特化した研究機関&研究中心大学の論文被引用数が高い傾向に。これらの機関・大学は定員は少ないが、奨励金がとても豊富で、学生1人あたりの支援が厚いため、研究成果が多い。
  • 例で取り上げられている光州科学技術院(GIST)は少数精鋭の教育機関。教授の場合、1年の担当講義は2つであるが、大型研究プロジェクトを担当している場合、講義免除

これだけだと、マクロすぎて、日本との差分を掴みづらいので、時間があったらもっと調べたいところ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました