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【舌下免疫療法】シダキュアはなぜ1分間舌下に保持し、その後5分間うがい飲食ダメなのか?

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はじめに

鹿児島にいた時は花粉症に悩まされることは記憶になかったのだが(桜島の火山灰でコンタクトだと目がやられることはあった)、大学以降、東京来てから年々花粉症がひどくなっている。

皮膚科の先生から、「舌下免疫やっても良いかもですね」と言われたので、特異的IgE抗体検査したところ下記の結果に。

案の定、スギは引っかかっていたので、シダキュアを始めることにした。

牛肉、ミルクも引っかかっていて、症状が出ている記憶はないのだが、意外だった。

現在、最初の1週間に相当し2000JAU錠内服中。
内服方法の説明を受けていたら種々の疑問が浮かんできたので、調べてみた。

シダキュアは2000JAU錠が現在品薄に

シダキュアは、スギ花粉を原因とするアレルギー性鼻炎に対する舌下投与のアレルゲン免疫療法薬。初めの1週間は2,000JAU錠を服用し、2週目以降は5,000JAU錠を服用する。

これは、最初に低い濃度から始めることで、副作用のリスクを最小限に抑えつつ、体の免疫系がアレルゲンに慣れることを促すため。

ただ、日本耳鼻咽喉科学会のお知らせにも明記されているように、シダキュアは現在2000JAU錠が限定出荷状態で、舌下免疫を希望する患者さんがいても在庫がなくて始められないことも。

https://www.jibika.or.jp/modules/committees/index.php?content_id=136

5000JAU錠の方が維持期でよく利用するので、こちらが需要過多で品薄なら分かるのだが、なぜか服用開始1週間しか使用しない2000JAU錠の方が限定出荷になっているのは疑問。鳥居薬品の説明には下記の記載があった。

大幅な増産体制確立には一定の期間を要することから『シダキュア 2,000JAU』(増量期製剤)に関しましては、引き続き 2024 年も限定出荷を継続させていただきます。なお、弊社から特約店への出荷 予定数量は現時点では 2023 年と同程度を見込んでおります。
なお、限定出荷の解除時期につきましては、2025 年以降を見込んでおります。

もし、舌下免疫開始したい場合には、上記の2000JAU錠が在庫なくて始められない可能性と、花粉症終了後できるだけ早期に開始した方が翌年の花粉症の時期の症状をより軽減できると思うので、早く始めた方が良さそう。

ちなみに、「JAU」は「Japanese Allergy Units」の略で、「日本アレルギー単位」のこと。これは、アレルギー治療に使用される薬剤のアレルゲン含有量を示す単位であり、特に日本で用いられる単位。

維持期が5,000JAU錠になっているのは、臨床試験で10,000JAU 群と比較して効果は同程度だったので、5,000JAU錠で十分だろうとの判断から。

舌下にて 1 分間保持した後、飲み込むのはなぜか?

シダキュアは舌下免疫療法(Sublingual Immunotherapy:SLIT)の名の通り、スギ花粉抽出物を含有する速溶性の舌下錠であり、スギ花粉症に対する減感作療法(アレルゲン免疫療法)薬。

舌下にて1分間保持した後、飲み込むという服用方法。

速溶性なので、入れた瞬間から唾液で溶けてなくなるが、唾液はすぐに飲み込んではダメで、1分間舌の下に保持し続ける必要がある。

なぜ、1分間保持する必要があるのか?これはには大きく3つの理由がある。

免疫反応の促進

  • 舌下には、リンパ組織が豊富に存在しており、免疫系の反応を誘発しやすい環境。舌下の粘膜を通じてアレルゲンが直接免疫系に接触することで、体がアレルゲンに対して耐性をつくる助けとなる。

効率的な吸収

  • 舌下の粘膜は血流が豊富で、アレルゲンが直接血流に吸収されやすいため、効率的に免疫系にアレルゲンを届けることができる。これにより、アレルギー反応の抑制に必要な免疫反応がより速く、より効果的に起こりる。

副作用の低減

  • 舌下で一定時間保持することで、アレルゲンの全体量が急激に消化管に入るのを防ぐ。これにより、胃腸に関連した副作用(例えば、吐き気や胃痛)を減らすことができる。

上記有効性と副作用のバランスをとった値が1分間であり、臨床データに基づく値として決定されている。確かに1分以上舌下に保持し続けるのはほぼ不可能というか患者負担が大きくなりそうな体感。

内服後 5 分間は、うがいや飲食を控えるのはなぜか?

こちらも、効果と安全性の2つの観点からの理由による。

アレルゲンの効率的な吸収を確保するため

アレルゲンが舌下の粘膜を通じて血流に吸収される過程は、一定の時間が必要。うがいや飲食を行うと、舌下に投与されたアレルゲンが洗い流されるか、飲み込まれてしまい、必要な量が正確に吸収されない可能性がある

副作用のリスクを減らすため

アレルゲンが食道や胃に直接入ることを避けることで、胃腸に関連する副作用(例えば、吐き気や胃痛)を低減することができる

あとは、小児(5~17 歳)を含むスギ花粉症患者を対象に実施した国内第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験は、投与方法を「1 日 1 回、TO-206 錠 1 錠を舌下に置き、1 分間保持した後、飲み込む。その後 5 分間は、うがい・飲食を控える。」として実施したとあるので、臨床試験が上記方法だったから、実際の服用方法も準拠しているといえる

副作用は投与開始から1ヶ月以内が多い

舌下免疫による副作用は、主に下記3つ

  • 口腔内浮腫、かゆみ、不快感
  • 喉の刺激感、不快感
  • 耳のかゆみ

その中でも口腔内の症状が多く、投与開始から時間を経つと漸減していく。1ヶ月以内が多い。

減感作療法の効果発現メカニズムは解明されていない

減感作療法(アレルゲン免疫療法)は、アレルギー反応を引き起こす物質(アレルゲン)に対して、体の耐性を高める治療方法だが、実は、効果発現の詳細メカニズムは十分に解明されていない。

下記プロセスが、減感作療法によりアレルギー反応が緩和される理由を説明しているが、それぞれの機構の詳細や相互作用はまだ完全には解明されていない。

1. アレルゲンの捕捉と初期の免疫応答

舌下投与されたアレルゲンは、口腔粘膜下の樹状細胞によって迅速に捕捉される。樹状細胞は免疫系のセンチネル(監視細胞)として機能し、アレルゲンを認識して他の免疫細胞に情報を伝える重要な役割を果たす。

2. 免疫応答の変調

樹状細胞によるアレルゲンの処理と提示後、免疫応答はTh2型からTh1型へとシフトする。通常、アレルギー反応はTh2型免疫応答に関連しており、この反応がIgE抗体の産生を促進し、アレルギー症状を引き起こす。減感作療法では、Th1応答の促進により、炎症を引き起こすTh2応答の活動が抑制される。

3. 制御性T細胞の誘導

治療によって制御性T細胞(Treg細胞)が増加する。これらの細胞は免疫反応を抑制し、過剰な免疫反応を抑えることでアレルギー反応の調節に寄与する。

4. 抗体産生の変化

アレルゲン特異的なIgGおよびIgA抗体が増加することが観察されている。これらの抗体は、アレルゲンに対する保護的な役割を果たし、IgEによる過剰な反応をブロックすることで、アレルギー症状の発現を抑制する。

終わりに

勉強になった

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