【メルプ⑥】VCから1億円のバリュエーションに対して20%のシェアを提案され、、、

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この連載記事では、当時ビジネスを全く知らなかった私(かず)が、初めて医療業界のSaaS「メルプWEB問診」を立ち上げて、約3年後に約200医療機関にサービスを導入した0→1終了のタイミングで2020年に株式会社JMDCに売却するまでの話です。当時、何を考えていたのか、失敗したこと、うまくいったことを振り返っていきます。圧倒的にリアルで生々しい、メルプのリアルを、共に見ていきましょう。

前話までのあらすじ
主人公、かずは、医学部6年生の時に医療系のアプリ開発コンテストに参加し、そこで、後のメルプ共同創業者兼CTOとなる片岡と出会う。その時のお薬飲み忘れ防止IoTサービスは、3年を経てクローズしチームも解散することになり、また0から出発することに。そこに学生の時の同級生で眼科医をしている水上が加わり、3人の創業メンバーになり、サービスアイデアを出し合った結果、WEB問診サービスに決まる。VCから投資の話がきて、、

第5話はこちら>

読み物としての回想録部分は無料公開にしていますので、物語として楽しみたい方は全てのストーリーを無料でお楽しみください。関連するTipsや思考法の部分は有料にしていますので、ご興味のある方はご購入ください。

VCとの投資検討に関する打ち合わせ

知識の差により丸め込まれそうに

さて、事業アイデアもWEB問診に決まり、自己資本金300万円でサービス開発を始めました。前のお薬IoTサービスの時に繋がった投資家の1人が、面倒見よく声をかけてくださっていたので、事業をピボットしたことも連絡したところ、ぜひ聞かせててということで事業アイデアをプレゼンしました。

事業アイデアに関しては、WEB問診による医療機関の業務効率化ということで筋は悪くなさそうだけれども、TAM(ある市場で獲得できる可能性のある最大の市場規模)がどのくらいで、医療機関向けの営業はどのようにしてやった方が良いかなどをもっと深掘りするように言われ、かつアイデアもいくつか出してくださいました。

その方は、とても熱量のある方でしたが、当時私がビジネス経験がほぼ0に等しいということもあり、どちらかというと教えを乞うという立場でしたので、本来であれば投資も対等に議論するべきではあるのですが、丸め込まれそうになる印象を持っていました。

本当に相性的な問題なのですが(まぁ、投資なんて結局は創業者とVCの相性で決まると言っても過言ではないと思いますが)、押しが強すぎるなという印象があり、その点に違和感を感じていました。

とはいえ、かなり親身になってアドバイスをしてくださっていましたので、押しの強さはさておき、信頼しても良いのかなとも思い、結構心が揺れていて、残りのメンバーにも相談したりしました。

ただ、他の2人は別でそれぞれ本業があったので、なかなか投資家の方と顔を合わせる機会を作るのが難しく、自分が伝書鳩のようにその投資家との打ち合わせ内容を伝えるので、細かい雰囲気やニュアンスまで共有できず、その点でもやや苦労しました。

1億円のバリュエーションに対して20%の出資条件

そして、打ち合わせをしていく中で当然一番重要な出資条件の話も出てきて、提示された案は

君たちは、まだサービスはアイデア段階でプロトタイプもない状態なので、その点でプロダクトに対するバリュエーションは低い。かつ、事業はピボットの可能性も十二分にある。
ただ、自分は君たちのチームを評価しているので、人に対するバリュエーションということで、現在は1億円のバリュエーションに対して20%を出資したいと思う。

でした。当時は、最初の時点で20%もシェアを取られることが、どれだけダメなことかの判断基準も持ち合わせていなかったので、

これで2000万円入るなら、安心してサービス開発できるかもしれない。良いかも

くらいにしか考えていなかったのですが、結局は、ちょっと押しが強しぎて自分と相性が悪いかもという理由でお断りしました。

今振り返ってみると、バリュエーションは適正だったかもしれないが、いきなり20%のシェアをとることを起業家に伝えた時点でお断り案件ですね。
何も知らない初心者起業家をカモにしてしまおうという魂胆が見え透いています。取ったとしても10%が適正だと思います。

たまたま、この時は相性問題という別の直感が働いて回避できましたが、契約を仮に結んでしまっていたら、どうなってしまっただろうとヒヤヒヤします。

おそらく、学生起業家や社会人でも株の希薄化に関してあまり知らない(最初はみんなそうなのだが)起業家の場合、最初の時点で20%以上、中には30%近くもVCにシェアを取られてしまい、泣き寝入りしている人たちも知っているので、なかなか闇は深いですね。

ただ、その投資家の方からのアドバイスでターニングポイントになった良かった出来事も一つありました。

アーリーステージの投資に関しては、日本では最近J-kissが流行っており(アメリカは、SAFEというJ-kissからさらに、起業家側に負債がないという点で起業家に有利な契約が流行っています)、その功罪に関してはVoicyのチャネルでベンチャー支援家Kさんが解説されています。ご興味のある方は、ぜひ聞いてみてください。

シード投資にJ-kiss流行りすぎ、シードVCバブル | ベンチャー支援家K「ベンチャーニュースで言いたい放題」/ Voicy - 音声プラットフォーム
音声放送チャンネル「ベンチャー支援家K」の「シード投資にJ-kiss流行りすぎ、シードVCバブル(2022年3月5日放送)」。Voicy - 音声プラットフォーム

片岡へのフルコミットの提案

共同創業者にフルコミットするように連絡しろと言われ、、

当時は、サービス開発は私とCTOの片岡で行っていましたが、片岡は平日は本業のR社での新規事業開発がありましたので、土日だけ副業として手伝うという感じで、サービス開発をもう少し早められないかなと考えていました。

そのことを先ほどの投資家に相談したところ

君は本気で事業を軌道に載せたいと思っているのか?本当に本気なら、今すぐそのCTOに連絡して、1週間以内に辞めさせるように言え。

と言われ、それもそうだなと間に受けた私は、その場で携帯を取り出し、お昼過ぎだったと思いますが、片岡の携帯に連絡をかけ

1週間以内にR社を辞めてくれない?

と勢いのままに伝えました。
お昼休憩が終わって午後の勤務開始のタイミングで、いきなり、1週間以内に会社辞めてフルコミットしてくれなんて言われたら、え!!?と思ってしまいますよね?しかも片岡はその時、ちょうど第一子が生まれて生後2ヶ月くらいでプライベートも大変な時期でした。

もちろん、片岡の反応も

え!!??いきなり!?
お、、おう。ちょっと考えて、上司にも打診しないといけないから、考えるね。。

という、かなり戸惑った感じでした。

かくいう、私は、勢い余ってフルコミットを伝えたものの、そろそろ開発を加速させないとなと思っていたこともあり、電話で一方的に要件を伝えた後は、すっきりした気持ちになり、対面で話をしていた投資家に

今、伝えました

と話し、投資家も「いいね!それでこそ本気で事業をやるというものだ」みたいな内容の返事をしてくれました。

そして、なんと、片岡はその後上司に退職願を出し、2ヶ月後の2017年4月にフルコミットとしてflixy社にジョインすることになります。

奥さんにも挨拶に行き

ちなみに、まだ子供も生まれたばかりで、片岡の奥さんとしても非常に心配だったと思います。片岡から、奥さんにも吉永から説明してくれと頼まれて、私は、上野駅のスタバで奥さんにも会いまして、どうかよろしくお願いしますと伝えて、何とかOKをいただきました。

奥さんからすると

旦那は、東大卒エンジニアとしてR社で給与も安定して入って、かつ子供も生まれたばかり(2ヶ月くらい)でお金もこれから必要という時期に、顔も知らない中学高校の後輩から起業に誘われて、フルコミットでジョインするなんて正気なの!?不安でしかない。

という気持ちだったと思います。本当に感謝しかないです。

ちなみにちょっとした小話がありまして、私は片岡の奥さんと初めてお会いした時に、とても綺麗な人だったので、思ったことをそのまま

「綺麗ですね」

と伝えたのですが、それが好印象にうつったみたいで、それだけではないですが、片岡のフルコミットをOKいただきました。

JMDC売却後に増えた社員にその話をすると
「そんな言葉、絶対かけなさそうなのに」
とからかわれるのですが、決して、片岡にフルコミットしてもらいたかったから声かけたわけではありません^^。

そんなこんなで、2017年4月から片岡がフルコミットでジョインすることになりました。そして、早くも5月末には、キャッシュアウトで翌月の片岡の給与が払えなくなる、倒産してしまうという事態に陥ってしまいます。

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UC Berkeley SkyDeckのレクチャー

私は、この記事で出てくるメルプというサービスではなく、メルプ売却後にまた別の起業で始めたEarBrainというイヤホン型脳波プラットフォームサービスで、2022年9月にJETROのグローバルアクセラレーションプログラムというものに採択され、2022年11月〜2023年2月までの3ヶ月間、UC Berkeleyが主催するSkyDeckというスタートアッププログラムに参加していました。

Berkeley SKYDECK

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