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【メルプ⑤】創業者間株式割合は、事業にコミットする人が70%は持つべき?

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この連載記事では、当時ビジネスを全く知らなかった私(かず)が、初めて医療業界のSaaS「メルプWEB問診」を立ち上げて、約3年後に約200医療機関にサービスを導入した0→1終了のタイミングで2020年に株式会社JMDCに売却するまでの話です。当時、何を考えていたのか、失敗したこと、うまくいったことを振り返っていきます。圧倒的にリアルで生々しい、メルプのリアルを、共に見ていきましょう。

前話までのあらすじ
主人公、かずは、医学部6年生の時に医療系のアプリ開発コンテストに参加し、そこで、後のメルプ共同創業者兼CTOとなる片岡と出会う。その時のお薬飲み忘れ防止IoTサービスは、3年を経てクローズしチームも解散することになり、また0から出発することに。そこに学生の時の同級生で眼科医をしている水上が加わり、3人の創業メンバーになり、サービスアイデアを出し合った結果、WEB問診サービスに決まり、、

第4話はこちら>

読み物としての回想録部分は無料公開にしていますので、物語として楽しみたい方は全てのストーリーを無料でお楽しみください。関連するTipsや思考法の部分は有料にしていますので、ご興味のある方はご購入ください。

事業立ち上げに関するお金周り

創業者間株式割合どうする?

事業アイデアもいくつか出たものの、WEB問診サービスで行こうと決まり、創業者間株式割合を決めることに。前のお薬管理IoTサービスの時に、最後の方は法人化していたので、すでに100%私資本の法人はあったのですが、今回また0から別事業を行うことになったので、片岡・水上にも出資してもらうことにしました。

さて、創業したてのころ、特に初めての創業の時は勝手が分からず頭を悩ませる創業者間株式割合ですが、メルプの場合は、「吉永:90%、片岡:5%、水上:5%」で合意しました。正確に言うと、私がこの株式割合を2名に提案し、合意してもらいました。

実際には、私はその時、自分の生活費のために週1回だけ内科医として医師バイトをしていましたが(独身の場合、医師だと散財しない限り、週1のバイトでなんとか暮らしていけるのは、医師の強みだと思います。ただ、それで週3回くらい医師のバイトをしながら事業もして、非常に進みが遅くなっている場合もあるので一長一短ですが。医師以外の起業の場合、金銭的に基本的に背水の陣でフルコミットで臨んでいることが多いので、ハイリスクハイリターンではありますが事業スピードも早くなり成功する場合もあります。この辺りは難しいですね。)、他週6日は事業にコミットしようと思い、実際にそうしていました。

片岡は当時は某大企業のR社にいて新規事業のエンジニアとして平日は勤務していて、メルプは土日に副業的な感じで手伝ってもらっていましたし、水上も眼科医の勤務がメインだったので、実質時間的にもコミットして事業をドライブさせていくのは自分でした。

そのことは、他の二人も認識してくれていたので、「自分がこの事業にフルコミットして進めたいと思うので、この株式割合でどうか?」と提案して、特に揉めることもなく合意したという感じです。

実はその3ヶ月後くらいに、このままでは開発が遅くてだめだ、開発スピードを早める必要がある。と感じ、片岡にいきなり
「1週間以内に会社辞めて、フルコミットでジョインしてくれ」
と電話し、それと引き換えに株をさらに渡すことになりますが、その時のエピソードは今後。

振り返ってみて、この株式割合は100%正解だったかというとそうでもないと私は思うところはありますが、でも非常に理にかなっていたと思います。

この辺りの考え方に関しては、Tipsに記載しましたので、ご興味のある方は合わせてご覧ください。創業者株主間の株式割合の考え方・創業者間株主間契約の取り交わし方と盛り込むべき内容などについて記載しています。

ちなみに、アドバイザーを含む、いわゆる手は動かさないけれども経験とノウハウは持っていて、事業に参画してくれる人の株式割合をどうするかも、「コミット時間なのか能力と経験なのか」の二律背反問題で頭を悩ませる問題です。
こちらに関しては、メルプ売却後の次の起業でイヤホン型脳波を開発していた時にUCバークレーのスタートアッププログラムに参加する機会がありまして、アメリカではアドバイザーの株式割合の目安もしっかりコミット度合いによって基準が決まっていて系統だっていてさすがだなと思いました。基準がないと、相手からの申し出に対して、この人はこちらを下手に見てカモにしようとしているなとか、この人は妥当な株式割合の申し出をしていて信頼できそうだとかすらも分からないですよね。。アドバイザーの株式割合をどう考えるかも別記事でTipsで記載したいと思います。

自己資金は?

自己資金に関しては、私が研修医とその後のバイトで貯めたお金をほぼ全額ツッコミ、他の二人にも株式割合分を出資してもら、300万円で始めました。

研修医は、他の職業の新卒と比較するともらっている方だと思いますが、医師の中では特に給料が高い病院を私は選んだわけではなかったので、手取りで月17, 8万円だったと思います。それで2年間で貯めた分を事業資金に充てました。

あと、実は、アメリカに行ってコンピューターサイエンスのマスターを取りたいと思い、医師3年目の9月入学で10校くらい出願していたのですが、受かると思っていたら全滅していたことがわかりました。9月入学後の生活費・学費に向けて、医師3年目の4-8月は週5日でバイトを入れてなんとか稼がねばと言う感じですでに契約していたので、結局大学院には行けなかったものの4-8月の間のバイトの契約だけ残ったので、この5ヶ月間で溜まった金額を起業資金に充てることになりました。

ただ、すでに、前のお薬IoTサービスのハードウェアの開発で150万円くらいを使っていましたので、あまり手持ちの資金はなかったですね。

投資家から声をかけてもらえたが、、、

チームメンバーも決まり、会社設立や株式割合も決まったので、私のみほぼフルコミットで残り二人は週末に手伝ってもらうという感じで、WEB問診サービスの開発を進めていました。

とはいえ、自己資金300万円だけだと、心許ないなと思い、投資家周りもしていました。

実は、以前のお薬IoTサービスの際に、著名なVCが開催しているモーニングピッチというのがあり、投資家8名に1名ずつ合計8回順繰りサービスのプレゼンをして都度フィードバックをもらうというイベントに参加しました。その時に、サービスの実現可能性とビジネスモデル、マネタイズに関してかなり突っ込まれて、自分の考えの浅さと共に、「投資家に指摘されても、いやそんなことはない、絶対にうまくいく!というほどの熱意が自分の中にないな」というのを実感させられたことがきっかけで、お薬サービスはクローズしました。

ただ、その時に繋がった投資家の1人が、面倒見よく声をかけてくださっていたので、事業をピボットしたことも連絡したところ、ぜひ聞かせててということで事業アイデアをプレゼンしました。

事業アイデアに対して、とても前のめりだったかどうかは覚えていないのですが、出資検討するとなり、最初はこれで運転資金が入ると喜んで他の2名にも報告しました。

ただ、その後、投資条件と投資家との相性に関して思うところがあり、結果的には断ることになります。こちらに関しては次回。

Tips:創業者株式間割合の考え方

事業にコミットする人が70%以上持つべき

こちらに関しては、グロービス経営大学院講師の山中礼二さんのslide shareが簡潔によくまとまっているので紹介します。お薬IoTサービスの時のメンターをしてくださっており、その時にこの資料を教えていただいたので、メルプの時の創業者株式間割合も判断基準にさせていただき、助かりました。

友人3人で起業したから、株式を3分割というのは、最もやってはいけないことで、理由は主に2つあります

1)事業が進むにつれてコミット度に濃淡が出て揉める。
創業当時は3人ともある程度熱量は同じだと思いますが、未来永劫それが続くとは限らないです。むしろ続かないことが99.9%です。私のケースの場合のように、事業開始時点で、コミット時間が各々すでに異なるということもあるでしょうし、事業が進むにつれて、思ったほど事業がうまくいかない・伸びないとなった際に、どうしても創業者間でも濃淡が出始めます。

同じ思いがあったとしても、生活費も稼いで生きていけないので、各々の創業者のライフステージの変化により熱量は必ず変化します。思ったより事業が伸びないので、熱量が続かなくなった、結婚して子供が生まれたので、どうしても生活費を稼がないといけくなったので、またサラリーマンに戻る、もしくは事業へのコミットを減らす、フリーランサーの場合は受託の割合を増やすなどとどうしてもなってしまいますし、それ自体は普通のことです。一番フルコミットして自分の起業に全てをかけている代表取締役からしたら、なんで?今までは一緒に頑張っていたじゃん!裏切られたなどと思うかもしれないし、その気持ちはとてもよく分かりますが、人それぞれ人生があり、他人を変えることはできないので、本当に誰も責められない仕方がないことだと思います。自分の場合は、色々と経験してようやくある程度俯瞰してこの辺りも客観的に見ることができるようになりました。

もちろん、事業がうまく立ち上がり収益をすぐに出すようになって、役員報酬なり給与を全創業者に賄えるようになって、みんなフルコミットでハッピーというのが理想かもしれませんが、そこまでうまくいくケースは非常に稀です。

で、そうなった際に、株式を当配分していると、ほぼ必ず揉めます。
なので、創業者間でも株を買い取れるように契約しておき、一番時間と熱量を持ってコミットできる人が株を過半数持っておくべきです。

2)意思決定権が誰にあるか分からないと投資家から見られてしまう
創業メンバー間で意見が割れた時に、どう意思決定して進めていくかに関して、合議制で納得いくまで話し合う or 誰か1人が意思決定して反対を押し切ってでもとりあえず進んでみる の2パターンがあり、その中で割合的に揺れ動くは都度あると思います。

社内では都度うまく意思決定できる場合もあるでしょう。ただ、スタートアップは基本的に投資家から投資を受けて事業を大きくすることが多いので、投資家から見たときの株主構成というのも考慮に入れる必要があります。

で、外から見たときに株式等配分は、代表取締役を設置していたとしても誰が意思決定権を持っているか分からないとなり、投資を受けづらくなります。


3)一番事業にコミットする人が70%以上は持つべき

調達を繰り返すと、すぐに創業者の持ち株比率が減ってきて、自分たちだけで意思決定するのが難しくなります。
こちらも山中さんの資料の一部ですが、2人で創業し、それぞれ83%、17%と株を持っていても、3回ラウンドを繰り返すと、常勤創業者の持ち株比率は50%を割っています。

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