【全身脱毛】痛覚と笑気のはざまで

ゴリラクリニック
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「それでは、今から胸周りからスポット照射していきますね。」

今、私はゴリラクリニックの全身脱毛の施術室で仰向けに横たわっている。
先ほどスタッフからの初回説明が終わり、そのまま上半身コース(腕・背中・脇・胸・腹)という流れだ。

昨年、湘南美容で6回だけヒゲ脱毛をしたが、回数が少なかったこともあり(当時は6回も行けば十分だろうと勝手に考えていた)、また髭剃りの日常に戻された自分に、ほとほと嫌気がさし、今回はヒゲも永久脱毛したいと息巻いている次第である。

ちなみに、痛み耐性は、私は男性の中でも相対的に低い方だと思っている。以前、妻と台湾で足つぼマッサージを受けたとき、気持ち良さそうな顔をしている妻の横で、悶絶してのたうち回っており、妻からは白い目で見られた苦々しい記憶がある。

また、最近、家庭用の医療脱毛器「トリア」を購入して、これで、いよいよこのゴキブリのように生命力の強いヒゲを一網打尽にできると意気揚々としていたが、一番痛くないはずのレベル1の照射で痛すぎて、毎回アイスノンで20秒くらい冷やしてから1,2回だけ照射するのを繰り返すという無様さだ。

というわけで、ここからの話は、痛み耐性最弱レベルの人間が、MAXレベルの照射を受けたらどうなるか?という戯言と思って聞き流してもらいたい。

(お、、胸はちょっと痛いけど耐えられるぞ。これは、もしかしたら今回いけるのではないか?)
と淡い期待を抱いていたが、お腹の照射が始まると、それは一瞬にして 無残にも打ち砕かれた。

お腹は、へそ周りとへそ下を、メディオスターという蓄熱式のレーザーでジェルの上からローラーのように動かしていく。

(おっと、これは、、、痛い。あれ、普通に痛いよね!? 自分、へそ下はそんなに毛は生えていないけど、これでこんなに痛いの?)
思わず、両手を施術台の両脇に持っていき、我慢するように力を入れて握りしめてしまう。

「おへそ下、痛いですよね。後、2回で終わりますからね。」

この痛みを何と形容したら良いのだろう?
言うなれば、毛を剃っていない段階で、ガムテープでビリっと引き剥がすのを繰り返しされている感じ。
よく子供の頃イタズラで、したりされたりしてたやつ。

ただ、私の意識はすでに、次なる恐怖、「脇」に向かっていた。
そう、私は、へそ下は毛は少ないけど、脇は多い。前日に剃るのに一苦労したほどだ。

(へそ下でこれだけ痛いということは、脇はどうなるのだろう?果たして耐えられるだろうか?)
そんな恐怖だけが先行する。

そうこうしているうちに、お腹が終わり
「はい、では次は脇ですね。マーキングしていきますので、左腕を上にあげてください。」
施術の看護師は淡々と進めていく。

(そうですよね。部位ごとに休憩入れていたら、終わらないですし、一呼吸おいてはこちらの勝手な都合ですよね。休憩しようがしまいが結果変わらないですし、むしろ流れ作業ですよね。)
と、勝手に自己完結の自問自答ばかりしてしまう。

マーキングが終わり、いよいよ脇の照射開始。

(ベリベリベリッ!ちょっと待って、□△◇▽◎…. これは、うぉー、、、ベリベリベリッ again!)

想像を絶する痛さ。痛いという言葉が出てこないくらいの痛さ。
腕をあげている左手は、頭の上にある施術台をこれでもかというくらい固く握り締め、下げている右手も施術台を握り締めて歯を食いしばって耐える。

もちろん全部痛いのだが、不思議なことに、その中でも、さらにピンポイントで痛い瞬間があり、おそらく、毛の中でも、ぶっとい毛が抜けたのかなと感じられるような感覚がある。子供の頃読んだ「おおきなかぶ」の「かぶ」がまさに引っこ抜かれたような感じ。

「はい、半分終わりました。それでは次は縦に行きますね。」

(縦?え、縦?今、縦って言いました!?
ベリベリベリベリベリッ!
そうね。今までが横だったから、もちろん縦もですよね。おおお、一回が長い長いよ、ちょっと待って、えっ、まだ終わらない?)

冷や汗がダクダクで、脇汗が、上げている方の左腕をつたって、床に落ちたのではないかと(おそらく錯覚ではなく本当に汗が垂れてたと思う)。
次第に、汗の方が気になるようになり、パンツとズボンもびっしょ濡れで、さらに施術台まで濡れているような気がする。恥ずかしい。汗で施術台濡らしたらどうしよう。など、余計なことばかりが頭を駆け巡る。

「脇も痛いですよね。」
「そうですね。ちょっと汗が出過ぎてしまって、、」
「そうですよね。そういう方もたくさんいらっしゃいますよ。」

さすがは百戦錬磨。同じような人を何人も見てきたのだろう。柳に雪折れなしの素晴らしい返答である。
とりあえず、汗の問題が解決されたようで一安心する。

「今回、上半身のみのコースだったのですが、腕と背中は毛質的に、照射するとむしろ増毛になる可能性があるので、なしにしますね。代わりに、空いた時間でヒゲもできますが、今日されていきますか?少し詰め込む感じにはなりますが。」

(おっとーーーー。ちょっと待て、その心の準備はまだできてなかったぞ。もう片方の脇を耐えたら、今日は終了だとばかり思っていたが、なんと選りに選って一番痛いとされるヒゲ!!!
でも、先延ばしにしても、どうせやらないといけないんだよなぁ。というか永久脱毛は15回くらいかかるとカウンセリングで言われたし、、、)

一瞬のうちに目まぐるしく頭が回転し、

「はい、お願いします。」
「では、この後、ヒゲも照射しますね。ヒゲは、他の部位より毛が密集していて濃いため、痛いです。今回、笑気麻酔ありのプランでご契約なので、麻酔も使うでよろしかったでしょうか?」

(脇の段階で、すでに悶絶する痛さであるが、ヒゲはもっと痛いですよという華麗なる先制パンチ。湘南美容の時も痛くて、通うのが思わず億劫になったほどである。)

「はい、お願いします。」

そして、自らの意思決定により、8割終えたかに思えていた今回の脱毛は、まだ5割である現実に突如として引き戻された。

その後、またも悶絶するような右脇が終わり
「それでは、ヒゲ脱毛の準備をしてきますので、いったん起き上がって、シャツを着てしばらくゆっくりしていて下さい。」

起き上がると、思わず、体にかけられていたタオルがぐっしょり濡れてないか、パンツ、ズボンは大丈夫か、後、何より施術台は大丈夫か素早く目をやる。
幸い、施術台は交換可能な紙シーツが敷いてあり、ほっと一安心。とはいえ、シーツが濡れてないか触ってみる。

(あれ、湿っている程度で思ったより濡れてないぞ。汗だくだくだと思ったのに。)

全く、何と比較しているのか分からないが、謎の安堵感に包まれ、来たるヒゲ脱毛を思いながら、施術台にて一人待つ。

待つ事数分、看護師がヒゲ脱毛用の麻酔やピーリングなどのセットをカートに入れて戻ってきた。

「それでは、まずは、ピーリングをしていきますね。少し顔にピリピリした感覚があると思います。」

恥ずかしい事に、ピーリングという用語を知らず、シェービングのことかな?と勘違い。いずれにしても、まだ脱毛が始まらない事に安堵する。

不思議なピリピリ、チリチリした、電気が顔全体に走っている感覚があり、ピーリングのことを知らなかった私は、
(おお、、この液体で剃り残しのヒゲが今取れているのかぁ。。これは画期的だな。)
などと、明後日の方向の妄想を膨らましていた。

「はい、ピーリングが終わりましたので、剃り残しをシェービングしますね。」
(あれ?ピーリングとは、、、?帰ってから調べよう。)

ピーリング、シェービング、マーキングと癒しの時間が続く。まるで、急降下の前に、ひたひたと登るジェットコースターに乗っている感覚である。

「マーキングが終わりました。それでは、今回、首以外の、鼻下、ほほ、アゴ、もみあげになりますので、鏡でご確認お願いします。」
(そういえば、湘南の時は、鼻下とアゴしかやらなかったな。今回、ほほともみあげもか。いよいよ、いよいよだな。)

「では、まず笑気麻酔をしていきます。マスクが鼻にかかるので、鼻から吸って吐いてください。次第に頭がぼーっとして、手足がしびれるような感じになります」

(そう、今回は、麻酔というお供がいる。大丈夫なはず!)
数十秒後
(あれ、全然効いている感じがしないのだけど、、、大丈夫か?)

「どうですか?頭がぼーっとしてきた感じがありますか?」
「いえ、まだ、、」
「ではもう1段階上げますね。」

数十秒後
「どうですか?」
「うーん、まだ、実感ないです」
「ではもう1段階上げますね。これが最大になります。少し時間がなくなってきましたので、顎下から始めていきますね。それでは、左顎を上に突き出してください。」

(ちょちょちょ、、始めるんかーい。ってか、全然麻酔効いてる感じがないんですけど、え、え、え。
あ、でも、今回詰め込んでヒゲもやってもらっているわけだし、そうですよね。待ってられないですよね。)

(ビリッベリベリッ!□△◇▽◎….)
痛い、痛いです。めっちゃ痛いです。脇下と同じかそれ以上。

私の場合、ほほや、もみあげ近くは、まばらに毛が生えているので、えら側から顎の中心にレーザーを当てると、痛いタイミングがバラバラという、一定していない感じも、それはそれで別の怖さと痛さがある事に気づかされた。

笑気よ。そなたの力はいずこへ、、、

その後、反対側の顎が終わり
「それでは、顎の正面を照射しますので、真っ直ぐにお顔を戻して顎を突き出してください。」

(あ、左やって右やったから顎は終わりだと思ってたのに、、、左右ではなく、左+右+正面ね。MECEとは、、)
この時の絶望感半端なし。

「下唇を中に噛みすぎて、ジェルが口に入りそうなので、もう少し力を緩めてくださいね。」
(ジェル、口の中に入ってもいいよ。それで痛みに耐えられるなら。)

「ちなみに、今、照射レベルは最大でやっていますからね。」
(お、最大なんだ!以前、湘南でやっていた時は、確かレベル5がMAXのレベル3だったぞ。レベル4をトライしようとしたけれども、痛すぎて断念したことを考えると、自分成長したんじゃないか!?)

と、束の間、謎の自信を取り戻す。

そのうちに、笑気が効いてきたのか、頭が少しぼーっとする感じが出てきた。

「それでは、最後に鼻下いきますね。一番痛いと思いますが、頑張ってください。」

(ふぅ。いよいよラスボス。。。って、あーーー、痛い痛い痛い、痛すぎる、、、これは死ぬレベル、、、□△◇▽◎□△◇▽◎□△◇▽◎、死んでいいですかね?)

湘南の時は、レベル3で縦方向に少しずつやってもらって、それでもまぁ痛かったのだが、今回はレベルMAXで、口角から人中に向かって一気にローラー照射。例えるなら、戦車が家屋をなぎ倒していく感じ。

「痛いときに、力んで「うっ!」となるお客様が多いですが、そうすると、笑気を吸えないので、できるだけ力まずに、笑気を鼻から吸って鼻から吐く事に意識してください。」

(はい…(涙目))

(あれ、今の話どっかで聞いたことがあるぞ?
あ、妻のお産に立ち会った時に、助産師の方が「辛いですね。でも、ここで力んではダメですよ。スッスッハー、スッスッハー! 」と言ってた、あれだ。医学生と研修医の時によく見ていた光景。

自分が今できることは、笑気を思いっきり吸って吐くのを繰り返す、それだけ、それだけ)

そうしているうちに、だんだん変な感覚になってきた。
笑気の力を信じて、過呼吸気味に鼻息荒く鼻呼吸をする自分、ぼーっとした頭の感覚、でも、笑気と私の努力を鼻で嘲笑うかのように、抗いようのない突き抜けた痛覚を脳に送りつけてくる照射レーザー。それに対して、無理だと分かりつつも、呼吸という武器しか持ち合わせていないので、深呼吸を繰り返すことで、なんとか対抗しようとする自分。看護師と自分だけの閉鎖的空間。聞こえるのは、レーザーの音と自分の鼻呼吸だけ。

拷問受けたことないけど、ミルグラム実験で電気ショックを受けてた人ってこんな感じだったのかな?なんて変な擬似体験をうけている気がした。

なかなか日常生活では得難い感覚であり、次第に好奇心が勝っていく自分がいる。

あんなに痛かったのに
(痛いから、今、これでもかというくらい、施術台の端を手で握りしめているけど、この行為は全く無意味なのではないか?むしろリラックスしたほうが痛みを感じないのではないか?)
なんて、変なことを考える余裕が出てきて、結局完全に力を抜くことはできなかったが、最後の方はいくらか力を抜けた気もしなくもない。

今までは看護師の
「はい、あと3回で照射終わりますからね。」
「左が終わりました。少し休憩してから右をしましょうか。」
といった、絶妙なタイミングでの一里塚に助けられてここまできたが、鼻下の最後のほうは、休憩してしまうと、今のこの絶妙な狭間の感覚が失われてしまうから続けてくれと思うようになっていた。

「はい、お疲れ様でした。これで今回は終わりになります。
この後ですが、保湿用のフェイスマスクをつけまして、後、肌荒れ用のお薬に関してですが、、、、、」

正直、意識朦朧としていて、説明の内容を覚えていない。
痛覚と笑気のはざまでの、一種のトランス状態(ドMと一言で片付けることもできる)の余韻覚めやらず、流れに身をまかせていた。
ただ、鼻下のピリピリした感覚だけは、痛みが、自身の存在意義を焼き付けるかのようにずっと残存していた。

※最初に申し上げましたように、痛みは個人差がありますし、私の例は特殊かもしれないので、これを読んで「全身脱毛=激痛」と誤解なさらぬよう、お願いいたします。今回は、MAXレベルの照射を受けましたが、調整もできるとのことでした。ネガキャンではありません。

予約制で待たされることもなく、カウンセリング・施術も流れるようなオペレーションで非常に良かったです。

下半身脱毛に続く


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