起業した時に、読んでおいて良かった/最初に読んでおけば良かったと個人的に思った本を、列挙。まずは本を列挙して、今回はその中の1つ「トラクション ―スタートアップが顧客をつかむ19のチャネル」について詳しく記載。
個人的おすすめ本一覧
- トラクション ―スタートアップが顧客をつかむ19のチャネル
- ストーリーとしての競争戦略
- 戦略プロフェッショナル:3部作全て良いが、もし医療系で起業している場合は「シェア逆転の企業変革ドラマ」が特におすすめ
- キャズム Ver.2 増補改訂版 新商品をブレイクさせる「超」マーケティング理論
- 成功者の告白
- 交渉術の基本
トラクション ―スタートアップが顧客をつかむ19のチャネル
英語版(原著)はこちら
スタートアップが人とお金のリソースがない中で、どのようにして顧客を掴んでいけば良いかに関して、具体的な施策事例を記載している。スタートアップのマーケティングの大局観を掴むには、バイブルと言っても過言ではないと個人的に思っている。まずはこの本を読んで全体像を掴んでから、各施策の各論を深掘りしたい場合(例えばSEO対策をしたいとか)はそれぞれの本を読んでいくのが良いと思う。
良かった点を箇条書きで列挙
50%ルール:良いサービスを作れば勝手に売れるということはない
- 良いサービスを作れば1人でに売れるということはない。起業家は特に技術ありきの場合は、マーケティングが疎かになってしまう。起業家は、開発に50%、トラクション獲得に50%の時間を割くべき。サービスをリリースする前の開発段階でも開発のみに注力するのではなく、どのように顧客獲得も進めていくかを同時進行で考えるべき。ベータ版をリリースしてから、マーケティングを考えますでは遅い。
- 失敗したスタートップのほとんどすべては製品やサービスを持っている。持っていないのは十分な顧客の数
- トラクション獲得と製品開発にはほぼ同程度の重要性があり、均等にリソースを割り当てるべき=50%ルール
特に自分の場合は、プロダクトアウトの発想になりがちで、かつ開発に目を向けがちなので、この50%ルールは最初読んだ時は、「確かにそうだよなぁ」と衝撃を受けた。
19種類のトラクションを具体例を交えて解説
下記19種類の顧客獲得チャネルを具体例を交えて解説してあるとともに、メリット・デメリットも3-5点でまとめてある。各トラクション・チャネルを専門的に深く理解したい人にとっては物足りない部分があるかもしれないが、ベンチャーの初期のマーケティング戦略の概観を知りたい人にとっては非常に良い。
- バイラルマーケティング
- バイラル係数=既存ユーザー1人あたりの招待数×CV率
- 一般的にバイラル係数≧0.5であればかなりの成長が見込める
- バイラルサイクル時間(潜在ユーザの正体から新規登録までにかかる日数)を短くすることに注力
- 初心者にとって一番簡単な方法は、別の誰かが実行したバイラルループを模倣して、自分のループが同じようにうまくいくようになるまで続けること
- PR
- 小さいメディアから始めて、徐々に大きいところにアプローチ
- 規格外PR
- SEM
- ターゲット顧客に製品を直接販売したい企業において特に効果を発揮。問題に対して積極的にソリューションを探す人をつかむことができる。
- ポテンシャルの高いキーワードを見つけてリスト化し、グループ分けを行い、それぞれのグループで様々な広告コピーやランディングページをテスト
- ソーシャル/ディスプレイ広告
- ユーザーをただLPに送り込むのではなく、その製品を開発した理由や、より大きなミッションなど、売り上げ意外の企業目的を広告に織り込む
- オフライン広告(OOH)
OOHの本来的な価値は、たくさんの人が集まる場所に掲出することによって、より多くの接触を狙うことにあるが、単なる接触率だけで語ることができない、アイデアに溢れた巧妙なクリエイティブが増えている。各社の面白いオフライン広告の事例記事はこちら。押し付けている広告ではなく、引き込まれるコンテンツへとシフトしている。
https://markezine.jp/article/detail/44650
- SEO
- ファットヘッド戦略:あなたの会社を直接表す検索キーワードでのランク入りを目指す
- ロングテール戦略:検索回数の少ない、より具体的な検索キーワードでのランキングを上げる。良質なコンテンツの大量作成とリンクビルディング
- コンテンツマーケティング
- メールマーケティング
- エンジニアリングの活用
- ブログ広告
- 登録プロセスの一部として、バナーを自分のブログやFBなどのwebサイトに埋め込んでもらう。埋め込んだユーザーにはdiscountしてサービスを利用できる
- ビジネス開発(パートナーシップ構築)
- 営業
- アフィリエイトプログラム
- Webサイト、アプリストア、SNS
- 毎年新しいプラットフォーム、新しいデバイス、新しい何かが登場する。スタートアップであれば、これから登場するプラットフォームで何かとてもクールなことができるかを考えるべき
- 展示会
- オフラインイベント
- 講演
- 自分の講演は常に録画または録音しておく
- 講演に使用するスライドをあらかじめSNSでオーディエンスに共有しておく。フォロワーは講演内容をあらかじめ知ることができる
- 講演中のSNS活用。講演内容で良いと感じることがあれば、その瞬間に積極的にツイートやシェアするよう促している。全てのスライドにツイッターのユーザー名を表示し、公演について何か言いたいことがあればいつでも彼宛にツイートするように誘導
- コミュニティ構築
マーケティングの優先順位の付け方:考え方
- スタートアップという人と金のリソースが限られている状況で、どのマーケティング手法を優先すべきか、どういう基準で決めるべきかについて書かれてある。1四半期で3つに絞り込み、絞り込んだ手法を検証する。その中でうまくいった手法は継続し、うまくいかなかった手法は捨てて、他の手法を選択し、またPDCA回していく。
- トラクションチャネルの最適化のために、恒常的にA/Bテストを実行する。様々なトラクションチャネルの状況の評価を助けてくれるオンラインツールが多数存在。各トラクションの分析には、最低でも顧客獲得単価とLTVの2つを含む。
- スタートアップのフェーズによって、最適なマーケティング手法は変わる(ということを知識として知っておくことが重要)ので、臨機応変にマーケティングも変えていくべき。例えば、最初はSNS施策でバズったとしても未来永劫その手法で顧客を安価に獲得できるとは限らない。必ずサチってくるので、サチってしまった後で、考え始めるのではなく裏では次のマーケティング手法を検証していくことが重要。とはいえ、逆説的になるが、うまくいった1つのマーケティング手法は、その時点でしゃぶり尽くすくらいにリソースを投下して最大限活用して顧客を獲得していくべきとのこと。
マーケティングの優先順位の付け方:具体的な手順
- 自社と似た企業が顧客獲得に成功した方法を時系列で理解
- マーケティング予算を無駄にしてきた失敗企業の歴史を理解
- チャネルをブレスト
- どの程度うまくいきそうか:5段階評価
- CAC(顧客獲得コスト)の見積もり
- チャネルが飽和状態に至るまで最大何名程度の顧客を獲得できるか
- テストに必要な期間
- ランクづけ→3つのチャネルを選び出す
- 優先順位づけ
- 複数のテストを同時に走らせる。
- テスト
- リソースの集中
- どの段階にあるスタートアップでも、顧客獲得においては1つのトラクションが他を圧倒するパフォーマンスを発揮する。常に1度に1つのチャネルに集中すべき
- 選択したチャネルにおいて最大限に成長できる方法を発見するためのテストを継続して行う
日本語だとkindle版がないのが個人的に残念。興味を持った方は単行本を購入してください。
原著(英語版)はkindle版あります。
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