【思考体力】考えるではなく、考え続けるのをどのように訓練するか?

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はじめに

最近、 YouTubeを物色してたら、藤井聡太さんと豊島将之さんの名人戦がおすすめでライブで出てたので見てみた。2人とも微動だにしない

https://www.youtube.com/watch?v=pf4ns_EiAEE

こんな感じの姿勢から、2人とも微動だにせずにずっと、次の手を考え続けている。持ち時間9時間の2日制というとんでもない長丁場の試合。普通に考えたら、頭爆発しそうである。

ちなみに将棋は小学生の時に少し興味持って、遊びがてら刺していたくらいで内容は全然わからない。

高校時代を振り返ると、化け物のようにすごい人がいて、自分も数学は得意な方だと認識していたのだが、所詮大学受験レベルである一方、その人は学問として数学が好きというレベルだった。

同じ難しい問題を解こうと言って、ある1つの難問をお互い家に持ち帰ったのだが、自分は家で2時間も考えずに、「難しいからやーめた」となったのに対して、翌日か翌々日彼が「10時間くらいかかったけど、解けたよ。難しかったけど楽しかった」と意気揚々と語りかけてきたのを聞き、「あ、違うな」と思わされた。あの時の衝撃は今でも鮮明に覚えている。

要領の良さ、頭の回転の速さ、地頭、瞬間的な集中力なども、もちろん大事ではあるが、それで通用するのは中の上くらいまでであって(それでも十分にすごいし社会的にも成功するだろうが)、そこから先は、上記ベースが同じレベルの人達になってくるので、「健康かどうか」「思考体力」の2つが明暗を分けるように個人的には思う。

今回は、思考体力とは何か?と、思考体力はどのようにして訓練できるのか?について考えたいと思う。

思考体力とは?

思考体力とは簡単にいうと「考え続けられる力」のこと。

もう少し具体的には

(1)複数または一つのことを

(2)長い時間(数時間〜研究だと数十年にも及ぶかもしれない)

(3)ずーっと薄く集中し続けて

(4)考え続けられる

ことができる力のこと。

さて、この思考体力はどのようにしたら鍛えられるのか?
まず、必要なマインドセットから

必要なマインドセット

思考体力を鍛えるのに必要なマインドセットとして、大きく挙げられるのは下記4つだろう。

曖昧さを受け入れる力

  • 不確実な状況や明確な答えが出ない問題に対しても、焦らずに対処できる心構え。

問題を頭の片隅に置いておく力

  • 日常生活や他の仕事をしながらも、問題を常に意識し続けることで、無意識のうちに解決策が浮かぶ可能性を高める。

本質を見極める力

  • 単に答えを見つけるだけでなく、その背後にある根本的な問題や課題を理解しようとする姿勢。

抽象的思考力

  • 複雑な問題を分解して基本的な要素を見つけ出し、それをもとに異なる出来事や問題を結びつける能力。

その中でも「グレーをグレーとして保持できる力」と「物事の本質を知りたいという欲求」。この2つが最も大事だと感じる。

大学受験までは答えがある問題だったのに対して、社会人になってからは答えがない問題が中心になってくるので、「すぐに答えが出ないことに焦るのではなく、答えを出さずともその答えに辿り着きそうな複数の仮説や選択肢を同時に頭の片隅に抱えて置けるか」が重要になってくる。

これは相当な思考のチェンジで、いきなり戦い方が異なるのであり、また、相当なワーキングメモリを保持しておかないといけない。

また、すぐに答えが出ないと、「今日も何も進まなかった」と自己嫌悪に陥りがちになり、すぐ場当たり的な回答を求めがちになるし、その方が物事が一見進んだ感じになるので当面の心地よさはあるが、根本的な解決には至っておらず、大局的に見ると回り道となっていることも多い。

表面的な回答への抗い難い誘惑に負けないためには、「物事の根本・本質を知りたい」という欲求が必要になる。生産性の呪縛から解き放たれる+すぐ答えが出ない状態に対して感覚鈍麻になる必要がある。後天的に養えるのかは不明だが。

思考体力はどうしたら鍛えられるか?

さて、具体的には思考体力はどうしたら鍛えられるのか?

一般的には下記4点が挙げられる。

自分の特性を知る

  • 自分の集中力や思考の持続時間を把握し、それに合わせた活動を行うことで、効率的に思考体力を鍛えることができる。

十分な睡眠をとる

  • 思考の燃費を良くし、効率的に考え続けるためには、適切な睡眠が不可欠。

複雑な問題に挑戦する

  • 意識的に難しい課題や問題に取り組む。プログラミング、数学の問題、戦略ゲームなど

成功体験を積む

  • 小さな成功体験を積み重ねることで、自信とモチベーションを高め、さらに思考体力を鍛える意欲を持続させることができる。

ただ、個人的には「分野横断的な好奇心」が一番重要と感じている。

1つの物事に対して、ある程度の時間をかけて真正面から取り組むのは大事だが、それだけでは解決できないことが多く、途中で見方を変える必要も出てくる。解けない問題というのは、視点を変えれば瓦解することもあり、正攻法だけでは一筋縄ではいかないことが多い。

というわけで、対象に関する好奇心だけではなく、絶えず異なる分野に関しても好奇心を持ち、浅く広くでよいので、絶えず頭に入れておく必要がある。

そのようにすることで、関連する具体同士の共通項を、あるタイミングで見つけることができ、物事を抽象的に考え、因数分解して素数を見つけることで、解決できる場合がある。

例)細胞のシグナル伝達とTransformerのアナロジー

ある適当な具体例を挙げてみる。

例えば、生命科学において、細胞のシグナル伝達経路の解明という問題に取り組んでいるとする。従来のモデルでは、各シグナル分子がその直近の隣接分子と直接的な相互作用を通じてシグナルを伝達すると主に考えられている。このアプローチは、シグナル伝達経路を段階的かつ直線的にモデル化することが多い。

ところで、最近、自然言語処理(NLP)の分野で使われるTransformerモデルに興味を持ち、ChatGPTの仕組みについて学んだとする。特に、Transformerがどのようにして文脈を理解し、適切な応答を生成するかに興味を持って調べた。Transformerモデルの自己注意機構では、各単語が他の全ての単語と相互作用し、その影響を受ける度合いを動的に計算するす。これにより、文脈全体を考慮した上で最適な応答を生成することができる。

Transformerモデルが頭の片隅にある状態で、ある時ふと「あれ、細胞のシグナル伝達もTransformerモデルのアナロジーでアプローチできるのでは?」と思い、照らし合わせて考えてみることにした。

Transformerモデルを細胞のシグナル伝達経路に当てはめると、各シグナル分子や経路がどのように相互作用し、全体の文脈(細胞の状態や環境)を理解するかを考えることができる。

例えば、あるシグナル分子Aが直接的にはシグナル分子BとCに影響を与えると考えられていたが、その前提そのものが違っていて、新しいモデルでは、AがBやCだけでなく、遠く離れたDやEにも影響を与え、それがBやCの挙動にも影響を及ぼす可能性を考慮する。また、シグナル分子Aの影響は、その濃度や活性状態に応じて動的に変化することも考えてみる。

など。

つまり、分野にこだわりなく(難しいが)好奇心を持ち、その分野で学習したことや知った情報を、頭の片隅に留めておくことで、自分が解こうとする問題に対して、解決できる可能性が高くなる。

世の中はテクノロジーの発展で、自分の興味にアルゴリズムが最適化する方向にどんどん進んでいるので(Amazonの関連書籍然り、SNSのタイムライン投稿然り、ニュース記事然り)、従来よりさらに、言うは易く行うは難しなのだが。

終わりに

かくいう私はというと、冒頭に紹介した彼らには到底及ばないが、大人になってからはいくらか身いついた気がする。

でも、基本的に大人になると、どの仕事をするかにもよるところが大きいが、なかなかまとまって時間をとって1つの問題にじっくり腰を据えて取り組むという機会を取れない。相当意識して時間を能動的に確保する必要がある。

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