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flixy「お薬IoTカレンダー」失敗の振り返り_お薬ケース編

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はじめに

今更感はあるが、メルプWEB問診の前に、学生時代に初めて大きなプロジェクトとして開発したflixy「お薬カレンダー」について、振り返りたいと思う。

2013〜2015年にかけての話なので、今から10年以上前である。

学生時代にアプリ開発コンテストに参画

当時、大学6年生の夏だったが、医療や看護などを学ぶ学生のコミュニティ「医療学生ラウンジ」が主催する医療アプリの開発コンテスト「アプリケア(Applicare)2013」にプレイヤーとして参加した。ちなみにこのアプリ開発コンテストの主催者は医学部の同級生の田澤君。

大学5年生の時にプログラミングに出会って、プロダクト開発の面白さに惹かれた私は、その後、ポリクリそっちのけで(すみません)、病院実習が終わって夕方5時くらいに帰宅後、夜中の2時くらいまで、ひたすらアプリ開発(当時はObjective-C)するというのを繰り返していた。

そうするうちに、アプリ開発コンテストを通じて、何か一つ大きなアプリを作りたいと思うようになり、アプリケアに参加した。

このコンテストは、運営側が、応募者の中から、医学生・エンジニア・デザイナーをそれぞれピックアップして3人1組のグループをシャッフルで編成するという、チーム編成がとてもユニークなものだった。

脱線するが、この時一緒になったチームのうちの1人のソフトウェアエンジニアが、たまたまラサール中高時代の1つ上の先輩の片岡で(とは言っても、中高時代に面識はなかったが)、その後、flixyはうまくいかなかったものの、次のメルプを一緒に共同創業することになる。

作りたいものではなく、コンテスト優勝から逆算して開発

チーム編成が決まり、3人で何かを作ろうとまずはアイデア出しを行った。途中で医療現場のヒアリングということで、亀田総合病院に伺って、実際の医療現場を見たり、話を伺ったりする機会を運営側が提供してくださった。

いくつかアイデアは出たものの、チームメンバーでハードウェアのエンジニアもいたことから、

『周りはおそらくアプリ単体のサービスを出してくるだろうから、うちはハードウェアも含めたIoTサービスを開発すれば、差別化になり、コンテストで優勝できるのでは?』という逆算思考が働き、お薬の飲み忘れを防ぐお薬IoTケース「flixy」を開発することにした。

あらかじめ専用ケースに薬をセットし、アプリに服薬時間を設定しておく。服薬の時間が来るとアプリにアラートが表示され、同時にケースのLEDが点滅して服薬を促すというIoTサービス。

タバコケースサイズのお薬ケースは3Dプリンターで作成し、中に薬シートを入れられるようにした。正確な測定方法ではないものの、お薬ケースの開閉、つまりお薬シートを取り出したことを持ってアプリに服薬を通知。服薬は本人だけでなく、家族も登録していれば家族にも通知が届く。

また、ゲーミフィケーションとして、お薬を飲めば飲むほど、自分の好きな芸能人や美人の顔が捲れてくる「美人めくり機能」というのも実装した。

作成したサービス紹介動画はこちら

アプリではなく、お薬ケースのIoTを開発するという選択自体は、結果として他のチームとの差別化につながり実装力が評価されコンテストで優勝することができたものの、実際にユーザーのニーズを捉えていなかったことと、何より、当時は自分が学生でお薬飲み忘れに関する当事者意識が薄かったがために、プロダクトに熱意が入りきらないという潜在的な原因も抱えてしまうことになった。

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驚くほど高かった学生チームの企画・開発力

何が失敗の原因だったのか?

ターゲットユーザーの解像度が低かったことと、ユーザーニーズを捉えきれていなかったこと、そして、コンテスト優勝するという手段と目的が逆転してしまっていたことなどが挙げられる。それぞれ見ていきたいと思う。

ユーザーニーズと利用シーンを捉えきれていなかった

このお薬IoTケースは、生活習慣病を抱えている40-50代の中高年をターゲットにしていた。

しかし、生活習慣病改善の薬、具体的には高血圧、脂質異常症、糖尿病になるが、製薬会社がすでにアドヒアランス対策を実施しており、ほとんどの薬は朝一回飲むのみにすでになっていた。

というわけで、ほとんどのケースでは、朝にリビングか仕事部屋にお薬ケースを置いていて、食事の後についでに忘れないように飲むなどしている方が多かったので、わざわざ職場にお薬を持参しないのが現状だった。

また、糖尿病の薬で1日3回の薬がある場合でも、ジップロックに該当の薬を入れてカバンに入れるか、職場のデスクにすでに昼用の薬を置いてあるかしており、わざわざ薬飲み忘れ防止のためだけに、お薬IoTケースを鞄に入れるのは現実的ではなかった。

コンテスト優勝するという手段と目的が逆転してしまった

こちらは今までに記載した通りなので、加筆することはないのだが、コンテストで優勝してしまったがために、その後の懇親会などで、興味を持つ企業との名刺交換が始まり、『面白そうなサービスなので情報交換しませんか?』と打診され、初めてのことだったので『やっぱりこのサービスで事業化できるのでは?』と舞い上がってしまったことがさらなる誤算だった。

結局、情報交換しても、事業が前に進むことはなく(あるあるだが)、でも、企業と打ち合わせをすること自体が初めてのことだったので、打ち合わせをするだけで、何か進んでいる感を感じてしまい、ユーザーニーズを捉えていないまま、開発も進まないまま、企画だけ進むという、あるあるの地獄に陥ってしまった。

ユーザーニーズと利用シーンを捉えきれていないなと、その後のユーザーヒアリングで感じており、潜在的にはプロジェクトを畳むかピボットしないと厳しそうとは感じていたものの、すでにある程度のサンクコストが積み上がっていたことと、コンテストで優勝した(だけなのだが)という謎の後押しとで、なかなかピボットするのにも時間がかかってしまった。

その後、Campfireでクラファンを出したりしたものの、本質を捉えていないサービスだったので、案の定、支援総額は目標金額に達成せずにクローズ。

flixy -「服薬をラクに、おしゃれに、楽しく」

最終的にはコンテスト優勝から半年以上経過してから、ターゲットを高齢者に変えて、お薬IoTカレンダーという形にピボットすることになったのだが、そこでも別の課題が待ち受けていた。続きは次回。

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