電子回路作成する時に、いつもダイオードの原理を忘れてしまい、理解に時間かかるので、ここでまとめておく。
半導体
半導体に関する解説は、こちらが分かりやすかった。
https://semi-journal.jp/basics/beginner/mean.html
半導体とは何か?
電気伝導性の良い(=電気抵抗率が低い)導体(金属など)と、電気伝導性が低い(=電気抵抗率の大きい)絶縁体(ゴムなど)の中間的な抵抗率をもつ物質。電気が流れやすくも流れにくくもない、中途半端な材料。
半導体は、条件によって電気抵抗率が大きく変化する性質を持つため、電気を流す・流さないを制御できるため、あらゆるデジタル機器に使われている。
n型半導体とp型半導体
n型半導体
- nはnegativeのn。電子(-)が通常よりも多い状態
- 真性半導体(Siが互いに共有結合している状態)にリン(p)を加えることで、共有結合に使われない電子1つが余る。余った電子は高エネルギーなので、結晶中を自由に動き回る
p型半導体
- pはpositiveのp。電子(-)が通常よりも少ない状態
- Siにホウ素(B)が混ざると、共有結合電子が足りずホール(正孔)が生成される。ホールが存在する部分は共有結合を作らず不安定なため、近くの電子が移動しホールを埋めて結合を作る。
- ホール伝導:電子が正孔を埋め続けることで、正孔が動いているように見えること。決して+の電荷が存在して移動しているわけではなく、あくまで移動しているのは電子(-)。正孔も文字通り「+のように見える穴」のことを指している。
- キャリア:半導体中を流れる電流の、電荷の運び手となるもの。電子および正孔が当てはまる。
p型/n型半導体の接合前のエネルギー準位
- p型半導体だから最外殻に電子がないというわけではない。電子も存在するがホールの方が多い。
- Ef:フェルミ準位のエネルギー(電子のいる確率が50%になるエネルギーの場所)
- Ec:伝導帯のエネルギー
- Ev:価電子帯(最外殻の電子)のエネルギー
pn結合と空乏層
p型のホールはn型方向に、n型の電子はp型方向へと拡散する。電子と正孔は界面近傍で電荷中和し消滅することで(対消滅)、pn接合面にはキャリア(正孔と電子)がない領域が生成される。これを空乏層という。
N型半導体内の自由電子とP型半導体内の正孔は、それぞれ電荷を持っているため、電界Eがかかると、電荷の符号に応じて力を受ける。
N型半導体内の電子はマイナスの電荷を持つため、生じた電界の方向とは逆に押し返される(=n型半導体の向きに押し返される)ことになり、P型半導体内の正孔はプラスの電荷を持つため、生じた電解と同方向に力を受ける(つまりP型半導体内に押し戻される)。これにより、両方のキャリアは電界によってその動きが阻止され、半導体内での拡散が制限され、平衡状態になる。
pn結合:順バイアスと逆バイアス
順バイアス
- p型半導体をプラス極、n型半導体をマイナス極をとして電圧をかけること
- pn接合に順方向バイアスを印加すると、電流が流れる
- n型半導体に電子を、p型半導体に正孔を注入する。n型半導体の電子は空乏層に押し出される。p型半導体の成功も空乏層に押し出される。空乏層内に押し出された電子と正孔は再結合し消滅する。再結合が繰り返されることで空乏層が狭まる。
- 半導体全体で見れば、p型半導体から引き抜かれた電子がpn接合界面まで到達していることとなり、順方向バイアスでは電流が流れる。
- とはいえ、電圧を多少かけないと空乏層は狭まらない。順方向電流を流すために必要な電圧を順方向電圧降下(VF)と呼ぶ。ダイオード(pn結合)の順方向電圧降下(VF)は、一般的に0.6-0.7V。Vfによって電力損失が発生するので、Vfは小さいのが理想。
逆バイアス
- p型半導体をマイナス極、n型半導体をプラス極として電圧をかけること
- 順バイアスの時とは逆で、空乏層が広がり電流はより流れにくくなる。
このようにして、pn結合では順バイアスでは電気が流れ、逆バイアスでは電気が流れない。電流を一方向のみに流す電気特性を「整流特性」という。
降伏現象:ツェナー・アバランシェ
しかし、実際には、pn接合に大きなを逆方向バイアスを印加すると、ある電圧から急激に逆方向に電流が流れるようになる。これを「降伏(ブレークダウン)」という。
この降伏現象には、ツェナー降伏とアバランシェ降伏の2種類がある。
アバランシェ降伏
- 電子の雪崩(アバランシェ)を利用した逆方向電流
- pn結合に大きな逆バイアスが印可されると、p型領域の自由電子が電界により加速される。加速された自由電子が結晶格子を構成するSi原子に衝突し、電子をたたき出す。この時、叩き出した電子が、叩き出された電子によって形成されたホールに埋まるのではなく、自由電子のまま移動し続ける。たたき出された電子は更に加速され、また別の電子をはじき出す。このようにして、p型半導体内で、電子はどんどん増えてn型半導体の方へ向かう。
ツェナー降伏
- 狭い空乏層に高電圧が印可されると、共有結合電子が引き抜かれ、電子・正孔対が生成し、トンネル効果により電流が流れる
- トンネル効果:空乏層が狭いので、p型半導体の価電子帯とn型半導体の伝導帯の距離が近くなり、価電子帯の電子が伝導帯に通り抜ける様になる。
空乏層は、不純物濃度が高いほど(高ドーパント濃度)、狭くなる。
- N型またはP型半導体における不純物の増加は、それぞれ自由電子や正孔の数を増加させる。この増加したキャリアの存在により、PN接合における空乏層での電荷の不均衡が早く解消され、結果として空乏層が狭くなる。
ツェナーとアバランシェの支配関係:不純物濃度と温度
実際には、降伏現象はツェナー降伏とアバランシェ降伏のうち降伏電圧の低い方の現象が起こる。どちらが優位になるかは、半導体の不純物濃度や温度により決まる
ツェナー降伏
- 不純物濃度が高い
- 温度が高い:禁制帯幅 Eg は小さくなり、トンネル現象が生じやすくなる→高温になるほど、低い電圧でツェナー降伏するので、ツェナー電圧(降伏する時の電圧)は温度に対して負の依存性を持つ。
アバランシェ降伏
- 不純物濃度が低い
- 温度が低い:温度の増大に従って自由電子の運動は激しくなるが、結晶の格子振動も激しくなり、格子にぶつかって移動しづらくなるため、電子雪崩は起きにくくなる→高温になるほど、高い電圧でアバランシェ降伏するので、ツェナー電圧は温度に対して正の依存性を持つ。
ダイオード
ダイオードは、pn接合を作って電極を設けたもの
ツェナーダイオード(定電圧ダイオード)
- ツェナーダイオードは、ツェナー降伏だけではなくアバランシェ降伏も含んでいる。
- 一般的なダイオードが整流作用(順方向にしか電流を流さない)を利用して用いられるのに対して、ツェナーダイオードは逆で、逆方向に働く降伏電圧(ツェナー電圧:Vz)が使用される。
- 降伏現象が生じた後は、ツェナー電流(Iz)が変化してもツェナー電圧(Vz)はそれほど変化しない→定電圧を得る目的で使用される
ツェナーダイオードの温度特性
- ツェナーダイオードは、ツェナー降伏(ツェナー電圧は負の温度特性)もアバランシェ降伏(ツェナー電圧は正の温度特性)も含んでいるため、ツェナー電圧は温度によって変化する。
- ツェナー電圧が5V付近を境界とし、5V付近よりもツェナー電圧が高いものは、アバランシェ効果が支配的となるので正の温度係数になり、5V付近よりもツェナー電圧が低いものはトンネル効果が支配的となるので負の温度係数となる。
- 5V付近ではツェナー効果とアバランシェ効果がせめぎ合うため、ツェナーダイオードの温度特定は5V付近が最も良い特性となり、基準電圧として使用されるツェナーダイオードは5V付近のものが多い
ツェナーダイオードの用途:定電圧・過電圧保護
- 定電圧を得る
- 過電圧(サージ電圧)保護・ノイズ保護
外部から何らかの過電圧が加わった場合に、ツェナーダイオードが無いと、入力ポートに過大な電圧がかかりマイコンが故障してしまう可能性がある。マイコンの入力ポートのラインにツェナーダイオードを入れると、外部からのツェナー電圧以上の電圧は、ツェナーダイオードがグランドに流すことによって、入力ポートには過大な電圧がかからないようにすることができる。
ショットキーバリアダイオード(SBD)
pn接合ではなく、金属とn型半導体の接合を使用したダイオード
ドイツの物理学者ヴァルター・H・ショットキーにちなんで名付けられた。半導体とメタルの接合部にはショットキー障壁と呼ばれる電気を一方向にしか流さない電気的な壁がある。
SBD特徴3つ:低Vf・逆電流大・高速スイッチング
1)順方向電圧降下(Vf)が低い◎
通常0.2〜0.4V。順方向の損失が小さく高効率
2)高速スイッチング◎
スイッチング=順方向バイアスと逆方向バイアスを切り替えること。
SBDは、p型半導体がない、つまり、ホールが存在しないので、スイッチングした時(順バイアスから逆バイアスに変更した時)にn型半導体内の電子を履き出すだけだけで良いので、逆回復時間(trr=スイッチングダイオードがオン状態から完全なオフ状態になるまでにかかる時間)が少ない=高速スイッチング
3)逆電流(IR・リーク電流)が大きい△
- 逆電流のことを、リーク電流・漏れ電流とも表記する。IR。
- 順方向の電流は容易に流れるが、逆方向の障壁も低いため、少量の電圧で逆電流が流れやすくなる。ダイオードの逆方向に電圧VRを印加すると、逆電流IRが発生して電力損失(VR×IR)となる。
- また、金属と半導体間の障壁は温度に敏感で、温度が上がると逆電流が増加するので、電力損失も大きくなる。熱設計を誤ってしまうと熱暴走を起こしてしまう
低圧のスイッチング電源などに用いられることが多い。DCDCコンバータやACDCコンバータの二次側で整流を行なうダイオードに使用する。
LED(発光ダイオード)
- Light Emission Diodeの略
- 順方向の電圧をかけるとホールと電子はp-n接合に向けて移動し双方が結合して消滅する。このとき電子がエネルギーの高い伝導帯から、低い価電子帯に落ちるので余ったエネルギーが光として外部に放出される。
LEDで、やってはいけない回路
1)順電圧(VF)の時に電源と直接LEDを繋がない
電流制限抵抗がないので、LEDに過大電流が流れるためLEDの破壊につながる
大体20~30mA以上の電流が流れると、pn結合の空乏層で過熱が起こり、半導体の結晶構造が損傷する可能性。抵抗などを設ける
2)逆電圧(VR)で接続しない
逆電圧の最大定格値が3.5~5V程度と、その耐性は一般的なダイオードよりも非常に低いのが特徴です。この定格値を超えてしまうとLEDが壊れる
トランジスタ(p型とn型を3層に組み合わせたもの)についてはこちら
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