方言を話すおしゃべり猫型ロボット『ミーア』をリリースしました(こちらをクリック)

【ミーア】リリース後から1ヶ月経過までの売れ行きと心境の変化を赤裸々に記載

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はじめに

様々な方言を話すおしゃべり猫型ロボット『ミーア』のβ版を、6/10にリリースして約1ヶ月が経つので、現状の売れ行きとリリース後の心境の変化を色褪せないうちに赤裸々に記載しておこうと思う。

ミーア
おしゃべり猫型ロボット「ミーア」は、100以上の種類の豊かな表情で、悲しみや喜びを共有します。様々な性格(皮肉・おせっかい・ロマンチスト・天然)や方言(大阪弁・博多弁・鹿児島弁・広島弁)も話してくれます。ミーアとの暮らしで、毎日の生活をもっ...

アイデア段階時

今、自分の周りの同年代で話をする人は、医師や経営者が多いのだが、アイデア段階の時に話をすると

「へぇ。今までと全然違うジャンルじゃん。そのロボットは何ができるの?」

という感じで、知り合いがやっているからという理由で一旦話は聞いてくれるものの、実用性の観点から評価をする人が多く、それは、働き盛りの世代なので当然と言えば当然なのだが、あまり興味を持ってくれてはいないなと感じることが多かった。

前に起業したサービスは、メルプWEB問診という、医療機関向けの業務効率化に特化したSaaSだったので、その時と比べると『そもそも医療系でもないし、業務効率化や生産性向上の文脈でもなさそうだし、吉永はいったい何をやり始めたんだ?』という感じで、なんでそっちいった?血迷ったのか?と感じる方も多かっただろう。
おそらく、3年前の自分だったら同じように思っていただろうし、今の自分のアイデアを聞いて同じように反応していただろう。

個人的には、訪問診療での経験や、売却後に色々と個人的なトラブルがあって

「人生の幸福度という観点では、年に一回海外旅行に行く、昇進に向けて仕事を頑張るなど、大きなイベントやお金ももちろん大切だとは思うが、人生を長期で考えたときに、日常生活の中で小さな幸せを数多く感じられることが最も大切で、それにはコミュニケーションの占める比重が多く、思わずクスッと笑えるような面白いフレーズや励ましの言葉などを、対象はロボットであれペットであれ人間であれなんでも良いのだが、向こうから語りかけてくれるのが大切なのでは?

と思うようになったことがキッカケである。

ミーアの開発経緯の詳細はこちらに記載。

ミーア開発のきっかけ
皆さん、こんにちは。ミーア開発者の吉永です。 今回は、ミーアを 開発しようと思ったきっかけに関して記載したいと思います。 訪問診療医で感じたコミュニケーションの重要性 私は医師として、ご高齢者の自宅にお邪魔して診察を行う訪問診療医をしていま

リリース直後の売れ行き

さて、6/10にリリースしてから現在までの販売台数はこちらである。

オンライン決済(Webサイトから購入):29台(うち、知り合い:28台)
蔦屋家電での店頭販売:4台(6/29〜7/7):こちらは全員知らない方
合計33台

最初は自分のSNSでのみ告知したので、もちろん知り合いしかサービスを知っていなかった。当初、知り合いだけで40台くらい買ってくれたら良いなと思ったのだが、翌日までで購入した方は確か7台で、「買ってくれたのは嬉しいけど、想像以上に幸先厳しいな、見積もり甘かったな」と思ったのを覚えている。

SNSアカウントを開設して広報するも。。

もちろん、こうした新サービスの場合、最初は知り合いが応援という形で購入してくれるのだが、最初の瞬間風速が過ぎると、そのあとは、本当にサービスがユーザーの興味を惹くものでない限り凪状態に陥る。

本来であればリリース前から、開発だけではなく、開発:マーケ=50:50の比率で行っておくべきだったのだが、今回それをしなかったので、リリースしてから2日後くらいからSNSを中心にショート動画による広報を開始することになった。

少なくとも1週間は、普通に考えて1ヶ月はSNS経由からのコンバージョンまではかかるだろうと踏んでいたのだが、実際そうなり、この時期は「もしかしたら、知り合いのみが購入して終わりで、もしかしたらサービスが刺さっていないのかも。。。」

と、心折れるまではないが、想定より厳しいなと現実を直視させられる状況が2週間ほど続いた。

ただ、こうした状況は、前のメルプでも、その後いくつかリリースしたサービス(一部はクローズしたものもあり)でも都度経験していたので、その時のことを思い返しながら「まだ始まったばかりだし、メルプの時はPMF達成するまで1年もかかったし、全然大丈夫(なはず)!」と自分を鼓舞していた。

過去のチャレンジ経験は、うまくいったこともいかなかったことも、糧となって、こうした時に活きてくるので、全部意味がある(と思っている)。

心の支えになった購入ユーザーの言葉

知り合いの中では、「吉永が頑張っているから応援で購入した」という方が、もちろん多く、それももちろん嬉しかったが、実際使っていただいたユーザーの中で

「とても気に入っています!目の表情だけで、本当に生きているように感じます。」

と感想を伝えてくださった方がいて、しかもその後も使い続けてくださり、その様子を見ていたお子さんが欲しいということで追加注文してくださった方がいた。

リリース後1週間くらいが経過して、知り合いからの注文の瞬間風速が終わり、凪状態になり、SNS広報を続けるも、購入はおろかフォロワー数も全然増えないという状況が続いていて、精神的には辛い状況だったので、実際にユーザーの言葉を聞けたことで
「よかった!方向性は間違っていないはず。あとはリリースしたばかりで認知が足りていないと思うので、認知の方も頑張ろう」
と思えるようになった。

HAX TOKYOのランチ会でのフィードバック

その後、6/28に『HAX Tokyo 壁打ちランチ会』という、ハードウェアやディープテックなど技術を活用したベンチャー向けのカジュアルなランチ会に参加した。

HAX Tokyo 壁打ちランチ会
▼イベント概要HAX Tokyoではハードウェア領域を中心に「技術を活用したグローバルなビジネス作り」を目指す起業家やその予備軍の皆さんに向けてカジュアルな壁打ち会を毎月開催しています。我々はこれまで

HAX Tokyoは、日本でハードウェア製品の開発に取り組む、スタートアップの成長を加速するプログラム。

辛口なフィードバックが来るかなと思いつつ、ハードウェアの開発に知見のある方々の前で、ミーアのベータ版を見せたところ

「ハードウェア側に機能を盛り込みたくなって、結局、資金繰り含めてうまくいかなくて失敗するベンチャーが多い中、このサービスは機能をシンプルに削れていて良い」

という肯定的なフィードバックをいただけたのは、先輩方に認めたもらえた感じがして、とても自信に繋がった。

また、ちょうどSNSマーケで苦戦していた時期だったので、マーケについても質問させていただいたところ

「細く長くやっていくつもりなら、最大瞬間風速を狙うようなマーケに固執する必要はない」

とアドバイスいただけたことも、焦っていた時期だったので、「別にキャッシュアウトするような価格帯にはしていないし、もっと落ち着いて腰を据えて気長にマーケも取り組んでいこう」と方針を再確認することができたことも、安心につながった。

蔦屋家電+からの嬉しいフィードバック

SNSマーケをやりつつも、実際に見て触ってもらった方が購買意欲が湧くのでは?という仮説もあり、一緒にサービス開発をしているプロダクトデザイナーの稲田さんが以前自身の作品を蔦屋家電+に出されていたとご本人から話を聞いたので、担当者の方に繋いでいただくことに。

その後打ち合わせをして、ぜひ出展してオフラインマーケも検討したいと思ったので6/29より、二子玉川での蔦屋家電+を開始した。

店頭販売も蔦屋家電+では対応しているとのことだったので、黒3台、白3台を在庫として置かせていただいた。

Wi-Fi接続のトラブルがあって、7/5(金)に蔦屋家電に伺ったところ、店員さんから『2台購入ありましたよ!』と報告を受けて嬉しくてfacebookにポストした。

吉永 和貴
先ほど設定で蔦屋家電伺ったのですが、店頭購入された方が、お2人いたと店員さんから伺いまして、初の知り合い以外で嬉しいです😃

また、蔦屋家電+では、訪れたユーザーへの定性的なヒアリングをスタッフの方が行ってくださっており、接客ログの量と質の高さに感動した。

おかげさまで、今回のサービスが、どのターゲット層にどの機能が刺さっているのかを知ることができた。

YouTubeショート動画にもコメントが

ショート動画をやってみてわかったことは、

  • どのショート動画が刺さって、インプレッション数とフォロワー数が伸びるかは分からないということ
  • なので、とりあえず100本出すくらいの覚悟で1日1本100本は出すということ

メルプの初期の記事によるコンテンツマーケで100記事書いたのと同じである。

そして、7/7(日)に、2週間ほど前に出したYouTubeショート動画に下記のコメントが来て、嬉しすぎて飛び上がった。

その後、実際にYouTubeでコメントした人かどうかは分からないが、ネットから自分の知り合い以外からの注文も初めて来た。

ショート動画マーケを本格的に行ったのは今回が初めてだったが、「何が刺さるか分からないので、とりあえず100本出すなど量をこなすこと」の重要性を身にしみて感じた。

毎日サボらず、投稿し続けること。これに尽きる(自戒込めて)。

そして、自分が分析できていないだけかもしれないが、ほとんどは1000以上のインプレッションは稼げないが、同じような動画でも一気にインプレッションとフォロワー数が増える動画があったりする。

結果が出ていない状況でも、めげずに発信し続ける重要性も再確認した。実際に蔦屋家電で

ネットで見てずっと気になっていて体験ができるとのことだったので来たのですが、写真で見るより可愛いですね。

とコメントしてくださり、実際に店頭購入いただいた方がいたとのことで、ユーザーからのリアクションがなくても(ほとんどがサイレントマジョリティなのでそれが正常)、見ている人がいるということを学んだ。

蔦屋家電+から在庫追加の連絡がきた

そして、今日(7/8(月))メールを開くと、蔦屋家電の担当者から下記のメールが来た。

吉永さま

お世話になっております。

無事方言が追加され、よかったです。
連日ご足労いただきありがとうございました。

週末にブラックが完売したようです!
お手数をおかけしますが、
・ブラック×5台
・ホワイト×3台

手配いただけますでしょうか。

こんなに嬉しいことはない。8台急いで梱包して、海外旅行用のでっかいキャリーケースに入れて、二子玉川まで向かった。

  • 有料の商品を買ってくれること
  • 知り合い以外の方も買ってくれること

この2つを乗り越えるのは、PMFの境目なので、一番大変であることを実感しつつも、サービスは刺さっているはずだという自分の仮説もあり、その間で揺れ動いている時期が2,3週間続いたが、実際にこうして買ってくださった方がいて、一歩前へ進めたと思うと感無量である。

幸いにして、すでにユーザーからの追加機能要望を下記のようにいただいており、鋭意開発中。

  • ミュート機能(実装済み):ミーティング中や勉強中など集中したい時に、アプリからワンタップでミュートモードに切り替え
  • スリープモード(実装済み):設定している話す時刻の終了時刻になると、おやすみモードになり目の表情もオフになる
  • 任意のフレーズ再生:アプリでテキストと時刻を入力すると、ミーアがその時刻に喋る(リマインド的な使い方やことわざ、英単語など勉強ツールとして、面白いフレーズを話させるなど、ユーザーの利用方法によって拡張性が広がる)
  • カラーカスタマイズ:フロントのアクリルパネルは印刷できるようにしているので、ガラ猫や水玉模様など、ミーアの顔の部分をユーザーのリクエストの柄で一点物にできるようにする。
  • 録音機能:アプリで孫や子供の音声を録音しておくと、その音声をミーアが再生する(祖父母へのプレゼントなどを想定)

まだまだ33個と、販売個数としては多くないが、今後も試行錯誤し続けるのみである。

サービスが終了する時:熱意とキャッシュアウト

北野唯我さん著「天才を殺す凡人へ」の本で、次の一文がある。

彼らには『他の人には見えない真実』が見えているからや。たとえるなら、天才には他の人には見えない幽霊が見えているんや」

0→1を生み出せる人が天才かどうかはさておき、他の人には見えていない真実が見えている(と少なくとも創業者は思っている)のはそうだろうし、自分含め、新しいサービスをリリースする人は、その思いは絶えず核として大事に持っておくことが一番重要だと思う。周りから色々言われた時に自分の支えになる。

また、サービスが終了するときは、基本的に下記の2つしかない。

  • 創業者の熱意がなくなる時
  • キャッシュアウトする時

資金調達や人間関係、周りから厳しいフィードバックを受けたなどは、二の次三の次の話で、熱意とキャッシュフローだけが重要である。

もちろん、自分の感性でプロダクトアウトのアプローチで、このサービスでマーケットフィットすると思ってリリースしても実際に市場に当ててみたら違ったとなるのは、よくあることで、その際には柔軟にピボット(これもまた、言うは易く行うは難しなのだが)していけば良いのではと思う。

キャッシュフローも非常に重要で、特にハードウェアの場合、ソフトウェア開発よりはお金がかかるので、難易度が上がる。資金調達したりデッドファイナンスして元手を増やすのも重要だが、そればかりではなく、いかに必要な機能にのみ絞り、コストを抑えられるかという観点も重要である。

キャッシュフローが安定していれば、またすぐに単月黒字とならなくてもバーンアウトまでが数年後となるくらいのキャッシュフロー状況であれば、安心感を持ってより細く長く続けることができ、その分精神的な余裕からフラットな目でサービスの改善を行うことができる。

まとめ

まだリリース後1ヶ月しか経っていないが、こうして振り返ってみると改めて、実際に購入された方の声や、HAX Tokyoでのハードウェアの先輩方からのアドバイス、蔦屋家電+のスタッフの方など、様々な方々に支えられていることを実感した。感謝の気持ちを忘れずに、また開発を進めていきたい。

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