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【脳波】イヤホン型脳波測定デバイスの着想から一旦クローズまで

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はじめに

今回、約1年半くらい進めていた、睡眠の質を自動で改善するイヤホン型脳波デバイスの開発を一旦終了することにしました。完全に諦めたわけではなく、特に電極周りの技術革新を待ちつつ、また良きタイミングで参入しようと思います。

着想からクローズに至るまでの紆余曲折を記すとともに、耳からドライ電極で脳波を手軽に測定するにあたって、必要となりそうなハードウェア面での設計に関して、今後開発する方がショートカットできるようにまとめて公開したいと思います。後ほどリンクを貼りますので、脳波関連の開発にご興味のある方はご参照ください。

着想

確か、2021年4月くらいだったと思う。
医療機関向けのWEB問診サービス「メルプ」を2020年3月に売却して、丁度1年くらいが経過し、グロースをしている最中。飽きっぽい私は、次の0→1として何が良いかとぼんやり考え、2021年3月くらいから、医師向けの薬剤比較アプリ「イシヤク」を、JMDC新規事業としての立ち上げを構想し、薬剤データ作成に1日のほとんどの時間を費やしていた。
とはいえ、こちらのサービスは、事前のニーズ調査から自分の中では成功するという確信があり、あとは開発してリリースするだけという状態になっていたため、さらに別の0→1もできないかと考え始めた。

実は、メルプの前に学生の時に、お薬飲み忘れ防止IoTサービスを開発していたが、そのころはビジネスの知識も全くなく、プロダクトアウトで、ニーズに合ったサービスを作ることができずに、3年ほどダラダラと続けてサンクコストだけ上がってやめるにやめられず、でも結局クローズしたという過去がある。ハードウェア開発のコストとビジネスの難しさを痛感した。

その後、メルプ、イシヤクとソフトウェアを立ち上げて、今度はソフトウェアではなく、もう少し開発が難しい領域でチャレンジしたいという思いが沸々と出てきて、以前うまくいかなかったハードウェアにまた挑戦するのもありかなと思うようになった。

領域に関しては、ロケット・ホログラム・脳科学などが浮かんできたが、ロケットは大規模開発になるし、イーロンマスクがすでにSpaceXでどんどん先に進んでいる。ホログラムは、GAFA、特にマイクロソフトとFBが巨額の費用を投下して開発している。一方、脳科学に関しては、医学部の1-4年時に、大脳皮質の発生機構を研究するラボに所属していたこともあり、もともと興味があったのと、Medicalという自分のバックグラウンドも活かせるのではと感じた。というわけで、消去法と自分の強みを鑑みて、脳科学の何かをやってみるのが良いのでは、と領域を絞った。

そんな中、脳波というキーワードでPubMedで論文をリサーチしていたところ、2020年4月にUCバークレーの教授が公開していた下記の論文が目に止まった。

Wireless User-Generic Ear EEG - PubMed
In the past few years it has been demonstrated that electroencephalography (EEG) can be recorded from inside the ear (in...

この論文は、下記の図のように、脳波を耳からのみで測定するイヤホン型脳波デバイスで、Bluetooth接続を通じてアプリで脳波を可視化するというもの。実際に、うとうとした時や瞑想時などリラックスした時に生じるα波と呼ばれる脳波の測定に成功していた。
また、「このイヤホン型脳波デバイスは、将来的には、瞬きによる音声アシスタントの起動、ストレス検出、自動聴覚閾値検出などのBCIアプリケーションとして利用できるだろう」と書かれていた。BCIとはBrain Computer Interfaceの略で、脳とコンピューターやその他の外部機器と繋ぐ技術で、考えるだけで体を操作できるような、究極的には攻殻機動隊の世界である。

この論文を読んだときに「これだ!耳だけで脳波測定できるなんて信じられないけど、これを商用化できれば手軽に脳波を測定してクラウドにアップロードし、研究者は解析できる世界を構築できるのでは?」と、衝撃が走ったのを覚えている。

脳波測定器と言えば、従来は、10-20箇所くらい頭全体にジェルをつけた電極を設置して、それぞれワイヤーで測定器に繋いで計測するという非常に大掛かりなものであった。

自分も医学生の時の病院実習で体験したことがあるが、セットアップだけで10-20分かかるし、検査が終わってジェルを取るときに髪の毛も剥がれてしまって痛いと感じた。これだと、病院の検査室でしか脳波を測定できない。

最近は、商用型では脳波計の小型化も進んでいるが、それでもヘッドバンド型が多く、個人的にはGoogleグラスの失敗例も考えると、このヘッドバンドを日常的につけて外を出歩くとは思えなかった。

もちろん、耳からのみの脳波測定だと、側頭葉周辺の情報しか得られないので、カバレッジは低くなる。しかし、Apple watchの不整脈検知と同じで、Comfortableで日常的につけていられるデバイスを提供することが重要で、精度は若干目を瞑ったとしても、結果的に大規模な脳波データが集まり、精神神経疾患の研究開発に役立てることができるのではと。

というようなことを考え、この論文のMethodに記載の作成方法を参考に、まずはα波を測定できるイヤホン脳波型を作成しようと思い立った。

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